ワタシは神様にはなれない 公演情報 劇団YAKAN「ワタシは神様にはなれない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    微妙な印象をもった公演。

    説明にある 天界と魔界の戦争は、もう一万年以上続いている。しかし今では、末裔たちが先代の遺恨を継ぎ意味のない争いを続けているに過ぎない。そして「天使と悪魔の禁断の恋」となれば、異界版「ロミオとジュリエット」を連想してしまうが…。

    物語は、人間の少女と天界・魔界との関係などを面白可笑しく、そして切なく描く。少女の心の彷徨が中心であるが、天界の民主制や魔界の世襲制といった体制の違いに苦悩若しくは苛立つといったシーンを挿入する。しかし、そのシーンが物語全体にどのような意味合いや影響を持たせているのかが解らない。

    少女は高校の卒業式の後 転んで、天魔界の外れにあるライブハウス「Hell and Heaven 」に彷徨い込んでしまう。そこは何故か天使と悪魔が打ち解け共存している。彼女は、この場所で天使 悪魔と触れ合うことによって少しづつ孤独を癒していく。頑なに「一人で生きていく」という気持から他者との関わりの大切さを学んでいく。その意味では彼女の成長譚でもある。一方、天使や悪魔は人間に興味津々、人間界での流行りものについて彼女に質問するが…。
    (上演時間1時40分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術はライブハウス「Hell and Heaven 」内…下手に音響スペースがあるが、それ以外は雑多な物が雑然と置かれている。人間界から流れてきたモノ、家具、衣類、電気器具といった日用品からステッカー、ポスターといった貼物まである。天使 悪魔の顔は特殊メイクか。
    説明にある天界と魔界の戦争といった雰囲気はなく、和気あいあいと共存している。

    人間界で流行っていると思われている 関西漫才、漫画、ファッション、ロックン・ロールの稽古・練習に励んでいる。時に披露しあって楽しんでいるようでもある。そんな天魔界に彷徨い込んだ主人公・蒼井カナタ(荏原汐里サン)と天使・悪魔とが織りなす異界群像?劇であり彼女の成長譚。カナタには両親がいなく、晴華高校卒業式の総代挨拶で「一人で生きていく決意」を述べる。が 転んで気が付いたら、ここへ来てしまった。早く人間界(現世)へ戻りたい彼女は、天使と悪魔そして第三の といった それぞれが持っている3つの鍵を手に入れて、といった物語。

    天界は民主制で代表者・天使長を選出し、魔界は世襲制でサタンを名乗っている。先のカナタの話とは別に、天界における不穏<現民主制への不満、権力抗争>な動き、魔界の世襲制<現サタン 母⇒サタンJrへ譲位>について説明するシーンが描かれる。夫々のシーンが独立するように描かれており、天使・悪魔界の戦争に関係しているかのような印象を抱かせる。しかし、本筋であるカナタとの話に直接絡まず 収束してしまったのが残念。出来れば体制の違いが戦争の原因もしくは遠因であるといった、壮大な世界観を表現してほしかった。鋭い感覚というか豊かな感性が十分に表現仕切れなかったのが憾み。

    ラスト…カナタは、天使(天使長の妹)と人間の間に生まれた子であり、といった予定調和。楽器の生演奏、カナタの歌で観(魅)せたり、天使・悪魔による関西漫才、書けない漫画家、勘違いファッションといった面白可笑しい場面の印象が強く残る。
    他方、何故 カナタは異界へ逝ったのか、どうして父ナンシーは異界に居たのか、そして天使長の怒りに無事でいられた理由は といった疑問が解消されない。表層的には「天使と人間の禁断の恋」=カナタという愛の結晶を観たに過ぎないような。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2023/04/21 12:21

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