こぼれるかけら 公演情報 UGM Kreis「こぼれるかけら」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    男・女ともに美形のキャストを多く揃え、人を思いやることの大切さを描いた青春群像劇。客席通路を使用し、身近で観せるといった親近感を演出する。
    先に記すが、スタッフの対応が丁寧で 実に気持が良い。公演全体を通して、劇は勿論、終演後の写真撮影など、観客へのサービス精神〈思いやる〉に溢れている。

    物語は、或る事情によって生まれ故郷を離れた男が主人公。彼は大学生になり、偶然 幼馴染に再会する。が、何となく違和感を抱く。心の奥底に眠っていた記憶が徐々に甦った時、もう1つ 桜咲く並木道、今は亡き愛しき人との思い出を馳せた時…この2つの出来事を交差させ展開していく。

    事件や刺激的な出来事は起こらず 平凡な日々を坦々と紡ぐ。登場人物も どこにでも居そうな若者ばかり。舞台としては起伏に乏しいが、何となく心が温まり ホッとする内容である。
    カーテンコールで、田中宏輝さんが「第四の壁を越え、観客と一体となった演劇を」といった主旨の挨拶をしていたが、まさに観(魅)せるを意識した公演のようだ。

    同じような場面があり冗長に感じられること。登場人物が多く、ほんとうに必要な役柄なのか。簡素な舞台美術で情景変化が見られないこと などが残念なところ。一方、役者の熱量ある演技、その爽快感・躍動感が心地好い。テンポある展開が魅力なだけに、もう少しシャープな描きが出来ていれば…。
    (上演時間2時間 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に変形衝立というか張りぼて、その前に白い箱馬を横に並べているだけ。上手下手には生垣。キャストは、舞台中央や左右にある階段を上り下りし 客席通路を通り抜ける。

    物語は、大学3年の日南田郁人(山中翔太サン)が主人公。或る日、大学構内で幼馴染の鈴原連(田中宏輝サン)を見かけるが、何故か双子の颯(染谷凌佑サン)の名を名乗っている。成り替わって生きている。もともと体の弱った颯が連を庇って交通事故に遭った。それが理由で 長兄の要(藤代海サン)が大事をとって 病院以外に外出させない。颯の存在(名前)を忘れさせないため、連は颯のフリをしている。そして日々の出来事を話して聞かせる。

    一方、郁人は幼い頃に母・紫<ゆかり>(桜井しおりサン)を亡くし、遠縁(他人と言ってよいほど)の橋本美寿紀(小野沢智子サン)に育てられた。微かにある母の記憶、それが桜並木の風景と共にある。母子家庭、その母が自殺したとの噂もあり、郁人は気にかけている。幼い時に鈴原兄弟と図書館で一緒に読み聞かせしてもらった良き思い出が忘れられない。何年経っても楽しかった事は忘れない、ゆえに郁人が連に会った時の違和感、それは颯に成りすましていたこと。

    おぼろげな記憶…2つの話を交差させ、人を思いやる気持や人との絆の大切さを描く。寄り添う人々が織りなす ちょっぴり切なく、そして優しさに彩られた青春群像劇。それは今の時期に相応しい爽風を感じさせる。ラスト、亡母が郁人を写した写真、そこにはしっかり桜並木が…。「桜は散るのではなく舞うのだ」という台詞、そこに人生の謳歌の意を込める。登場人物は皆 善人ばかり。相手のことを思う気持、それは忘れず ちゃんと覚えていること。

    少し冗長と感じられたのが、例えば 要を慕う会社 後輩の愛嬌ある素振り等である。会社や鈴原家において 何度か同じような<愛情>シーンがあるが、あまり本筋に絡んでこない。コメディ要素を入れたかったのだろうか?

    当日パンフのUGM Kreis(緑川良介/子安由)さんの あいさつ「自分には些細な事でも、誰かにとっては心に響くこともある。ちっちゃな幸せ、少しの成長」とある。その思いは劇にしっかり込められていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/04/16 17:18

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