きらめく星座 公演情報 こまつ座「きらめく星座」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2023/04/12 (水) 13:00

    座席1階

    こまつ座創立40周年の井上ひさし「昭和庶民伝三部作」の第1弾。自分は3年前の舞台に続いての鑑賞だ。今回はレコード店「オデオン座」夫婦の息子で脱走兵という役柄を、ミュージカル俳優として進境著しい村井良大が演じた。

    「青空」など当時の流行歌がふんだんに歌われる舞台。ラストシーンの日付は先の大戦の開戦日の前日、12月7日。嫌がおうにも戦争に巻き込まれていく日本国民の生活が、レコード店夫婦の家庭を通じてクリアに描かれる。直接物語とは関係ないが、舞台の日めくりを見ると開戦の年の8月15日という日もある。4年後に日本が破滅するという運命を、客席は呪わずにはいられない。
    ただ、庶民が一方的な犠牲者であるという描き方もしていない。すき焼きを食べるシーンでにおいが外に漏れると「あの家は何かよからぬことをして儲けている」と密告されるから雨戸を閉める、という場面がある。隣組もそうなのだが、庶民がお互いを監視し合う世の中が戦争を後押ししたわけだ。これは最近のコロナ禍でもあった自粛警察を思わせるし、この舞台を見れば現代が新たな「戦前」であることは明白に分かる。
    前回の上演で紀伊國屋演劇賞を受けた松岡依都美の演技はやはり、見事だった。さらに、その義理の娘を演じた瀬戸さおりもよかった。村井良大はこまつ座初出演とのことだが、きれのいい演技と歌はとても安定感があった。こまつ座作品への今後の出演も期待できるのではないか。

    米国に追随して兵器を爆買いし、今にも戦争が起きるのではないかと不安が募る今だからこそ、戦争前夜の国民生活がどうだったかを知るためにも、ぜひ若い世代に見てほしい舞台だ。こまつ座のお客さんはやはり高齢者が主体で、今回もそうだった。多少、演技が荒っぽくても若い世代にアピールする俳優をあえて起用しても、上演を繰り返してほしい。

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    2023/04/12 21:08

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