実演鑑賞
満足度★★★★
この顔ぶれでこういう楽しめるショーを作るのはとても難しい。シスカンパニーならではの仕事である。
ストーリーは他愛ない。四十年ぶりにかつて兄弟コーラスで少しだけ当てた四人が再会して舞台に立とうとする。忘れがたいファンもいてそちらは女性の姉妹。興行を企むのは昔のマネージャー(寺脇康文)、さてどうなる、と言う使い古した枠組みのコメディなのだが、一癖ある演劇スターを四人並べて、いつもはテレビでも舞台でも主役の俳優たちが、大衆演劇のような役回りを演じる。もちろん、役の表現も、演技のテンポも、掛け合いの面白さも段違いだが、みな肩の力が抜けていて楽々とショーを楽しんでいるように見える。それぞれ見慣れた役どころ、おなじみのウケどころを封じていて、ここだけのショーになっている。ことにめったに舞台に出ない水谷豊がほどよい座長役(長男の役)をつとめて、これはこの芝居の観客の眼福だろう。
脇役陣三人の大車輪も大いに四人を引き立てている。
結局は、戦争前ではあるまいし、と悪たれをつきたくなるような、兄弟愛は人間の永遠の絆、というようなテーマに落ちていくのだが、これを現代で堂々と通用させているところがたいしたものなのである。(私は佐々木邦の兄弟ものを思い出した)
コロナ開けにはもってこいの興行でさすがに20歳代以下の人たちは少ないが、世田谷の小屋だけあって男女の成人客で三階まで満員、補助席まで出る大入りであった。