実演鑑賞
ハイバイ観劇何作目だったかで出くわした「おとこたち」は少々異色作、少し配役を変えての再演でも弾けた感はなく岩井氏の探ってる感が残る。・・とは後付けの印象かも知れぬが、新装PRCO劇場に寄せる(初)ミュージカル作にこの演目を?とまず訝ったのは正直な所。最後まで訝り続けたのだが、岩井氏の信頼する前野健太氏そして出演陣に期待し、「んーー」と迷った挙句観に行った。
結論的には、この作品のドラマツルギーが最もしっくりと、飲み込めた気がした。
構成はおそらく随分改められ、初演、再演で平原テツらが作るキャラと空気感(言わばハイバイ的空気感)と大きく風合いが異なり、過去の「おとこたち」の記憶と合致する場面は前半訪れず、「そうだこれだった」と思い出したのがほぼクライマックス、葬式の場面であった(表の顔しか知らなかった旧友の葬儀に参列し、死者を冒涜するかのふてぶてしい息子に諫めた男二人が、生前の家庭内の様子を伝える衝撃の録音を聞かされる)。
冒頭の「歌」はカラオケでガナるような塩梅で(ここは記憶と朧に合致)、ミュージカルってこれ?と不安が過ぎったが、少しずつ風景が細密化し、歌も地に足の付いた、そぐわしい物になって行く。人生を俯瞰して無常観(死そして意味の揺らぎ)とノスタルジーを呼び起こすドラマであるが、語り手(ユウスケ)を含めた四人それぞれの凡庸だったり数奇だったりする人生が、同じ時の流れに翻弄され、一つの結末に行き着く存在として並列され、想念の中の記念写真に納まるラストの図と、歌に図らずも涙腺が緩んだ。