ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶 公演情報 チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    歌と踊りとチェルフィッチュ
    「ホットペッパー」「クーラー」「お別れの挨拶」の順で上演。会社のオフィスらしい場所設定が共通で、それによって三作が一つのお話になっている。が、ストーリー自体はそんなに複雑なものではない。上演時間はトータルで70分ほど。
    私が見た回は場内の冷房がかなり効いていて寒かった。まさか「クーラー」という作品の内容に合わせて意図的にやったとは思わないが、これから見る予定の人はクーラー対策をしておいたほうがいいかも。

    「ホットペッパー」と「クーラー」はそれぞれ単独で見たことがあり、そのときはそれほど面白いと感じなかったが、今回は以前とどういう違いがあるのかはわからないけれど、最後まで、3作とも、面白く見た。

    ネタバレBOX

    「ホットペッパー」は武田力、伊東沙保、横尾文恵が出演。音楽はジョン・ケージ。台詞と動きが普通の演劇に比べるとよりいっそう音楽に呼応しているので、パフォーマーの音楽性やリズム感が優れていればいるほど、台詞は歌に、動きはダンスに近づくように思える。この3人の中では武田力のパフォーマンスが飛び抜けてよかった。派遣社員が退職することになり、その送別会をどうするかという相談がテクスト部分の内容だが、この作品ではもう歌と踊りのパフォーマンスだと割り切って、言葉の意味とかストーリーはあまり考えなくてもいいのではないかと思った。

    「クーラー」は山縣太一と安東真理が出演。これまでに2度見ているが、今回がいちばん面白く見られた。音楽はステレオラブとトータスとあるが、これは聞いたこともない。台詞や動きの反復が目立った。山縣太一の胸ポケットに入れたタバコが、彼が腰をかがめるたびに床に落ちる。何度目かに落ちたとき、タバコの箱が思わぬ方向へ転がったが、それでもパフォーマンスに大きな影響はなかった。それを見たとき、全部とはいわないまでも、一部にパフォーマーが即興をやる箇所を設けても面白いのではないかと思った。(いや、私が気づかなかっただけで実際にやっていたりして・・・)

    「お別れの挨拶」は前2作の出演者全員が下手に並び、彼らに送別される派遣社員の女性が挨拶をするという設定で、基本的にはそれを演じる南波圭のソロ・パフォーマンス。音楽はジョン・コルトレーン。ここではもう見る側も体をスイングさせる感じで、演劇というよりも音楽とダンスのパフォーマンスとして楽しんだ。

    これまでのチェルフィッチュの作品はおおむね演劇作品として見てきたし、その場合はパフォーマーのしゃべりや動きも基本的には役者の演技の延長として捉えていたが、今回のようにこれだけ音楽性が高まると、役者もただ芝居の演技力があるだけでは追いつかなくなってくるのではないだろうか。
    オペラ歌手とブロードウェイ・ミュージカルで活躍する役者を比べてときどき思うのだけど、前者は演技力がそこそこでも歌唱力があればカバーできるし、ダンスは踊れなくてもなんとかなる。それに対して後者は演技力のほかに、歌って踊ってが求められる。
    チェルフィッチュの芝居とブロードウェイのミュージカルを比べてもしかたがないが(笑)、今回のチェルフィッチュの作品が役者にとって通常の芝居よりもハードルが高いのは確かだろう。

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    2010/05/08 22:00

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