卍珠沙華 公演情報 ヅカ★ガール「卍珠沙華」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未見の団体。全員女性で禁断の世界を描く。
    満席の人気公演。キャスト全員での出迎えとお見送り(物販兼ねて)といった心配り👍

    谷崎潤一郎の「卍」を、「令和5年の新解釈にて再哲学し、ズカ★ガール流に描き出した意欲作」という謳い文句…観(魅)せるといった華やかさが印象的であった。新作を書く”先生”の原稿用紙の上、四つ巴の恋愛悲喜劇を爛漫と乱れ咲くという執筆<行為>、それと作品<物語自体>として同時並行して展開していく。原作の「卍」<まんじ>は、その文字の形が、主要な登場人物4人(園子、光子、孝太郎、栄次郎)の輻輳した関係を暗示している といったもの。基本はそれを準えている。

    今でこそ LGBTQはあまりスキャンダラスといった驚きはしない、というか 逆に現代の多様な性の在り方〈性的マイノリティ〉として注目されている。「卍」が連載された昭和3年当時は かなり刺激的だったのではなかろうか。「同性愛」という異常なる性愛奇譚、とは言えドロドロとした愛欲・溺愛といった執着心がない。そこが少し物足りない。むしろ或る種の清々しさ 華やかさ 幻想さが前面に出おり、その着飾りが裸の心を見えなくしている。
    谷崎作品=耽美的と捉え、禁断の逢瀬をエロティシズムに満ちたものと勝手に思っていたが…。
    (上演時間1時間15分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は雛祭り的な印象。場内は赤い幕(布)が飾られ、両端に雪洞が置かれ、花弁が散らばっている。中央にソファ、上手にアンティーク電話、下手側に机や書籍がある。所々に台詞(文章)が書かれた紙が貼られている。
    配役は次の通り。
    柿内園子:結崎あゆ花さん〈孝太郎の妻〉
    徳光光子:妃咲歩美さん〈奔放・蠱惑的な女性〉
    孝太郎:かまくらあや さん〈真面目な編集者〉
    綿貫栄次郎:来栖梨紗さん〈光子の婚約者〉
    先生:石黒乃莉子さん〈現実と劇中の小説家〉

    原作「卍」は、両性愛の女性と関係を結ぶ男女の愛欲の話で、2組の男女の関係が交錯する まんじ模様の倒錯的な愛を描いた作品として紹介されている。面白いのは、作者<先生>が歪な愛の行方、その終着をどのように書くか自問自答する様子。自分で物語の世界へ入り込み、登場人物に問い 答えや体験を聞くようなスタイル。作者が物語の登場人物の一人になり、独白する。飄々とし悠然と煙草を燻らせるが、実は倒錯世界の未体験者=作者が、作品<艶話>のために苦悩するような。女の情念というよりは、愛とは何か、その”あるべき姿”に翻弄される姿を描いているようだ。

    ズカ★ガール流の新解釈、再度哲学した「彼女たちの愛に教訓などない」は、現代性と結び付く。そして倒錯した愛からすこし離れたところから見守る、そんな別の愛情表現が女中:お梅(日替わりゲストキャスト:三葉彩夏サン)の存在である。曼殊沙華という天界の花ーおのずと悪業から離れることらしいが、それを「『卍』殊沙華」に置き換えて倒錯〈背徳?〉した愛を描く奇知〈皮肉?〉ある作品。

    演出は、女性…園子と光子は着物姿、それから逢瀬を重ね 日々の移ろいを表す洋服姿へ。園子は白地、光子は赤地といった対象色で彩る。暖色照明が服地を鮮やかに映す。照明の諧調によって妖しい雰囲気を漂わし、その中で着物を脱ぎ肌を合わす艶めかしい肢体。かと思えば、男役(男装した)と溌剌とタンゴを踊る、といった変化ある観(魅)せ方に女性演劇団体としての特長をみる。

    『卍珠沙華』 初めて様ご招待ー感謝です。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2023/03/24 06:27

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大