実演鑑賞
満足度★★★★★
SPAC舞台でも存在感を認める女優、布施安寿香氏は数年前鳥公園に客演しその鋭くかつ大らかな演技に感服した。この一風変わった企画(しかも入場料はそれなりに高い)に出かけたのは、プラスよくは知らないが一定評価のある和田ながら氏、そして決め手は謎の作家・多和田葉子のテキストに取り組んだものである事。(謎、と言っても著作は多く、翻訳家という出自を対象化し遡及することから執筆業は発したらしい、というぼんやりとした認識がある。ただ読むと入り組んだ思索に誘われ、凄みがあるが複雑で読了した事がない・・遅読のせいもあるが。)
舞台は圧倒的であった。一人称の語りが、様々な光景を見せる。物語は展開する。入れ子状態にもなり、主体はシフトするが人格は一つ。役者の肉体は喜々としてそれを体現し、観客と存分に共有する。105分の一人芝居。