実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/03/15 (水) 19:00
座席1階
Pカンパニーの別役実シリーズ。「諸国を遍歴する」を鑑賞。不条理の中にもいくつか笑いがあるのが別役さんの芝居のいいところであり、不条理でも安心できるところなのだが、今作はさすがに笑えない。不条理の果ては背筋が寒くなる展開である。
舞台は「移動宿泊所」という看板を樹木に引っかけた宿屋で、テントの中にベッド、その脇に簡素なテーブルだけ。ここを訪れる医者と看護師、牧師、そして二人の騎士と部下というメンバーで話は展開する。テーブルにさりげなく置いてある水差しに下剤を入れて、体調が悪くなったのを見て治療をしようとか、死んだら祈りを捧げてあげようとか、医者や牧師は自分の仕事で儲けようとする下心からスタート。その先は何でこうなるのかという「事件」が次々に起きていく。背筋が寒くなるというのは、次々に起きる事件の後味がよくないからだ。
これぞ別役ワールドというわけなのだが、Pカンパニーが上演した「トイレはこちら」のような笑いはない。手厳しい展開になっていく今作の方が、この世の中で生きていると身近に起きる裏切りとか、策略とか、見たくないものが眼前に現れ、世の中の不条理を浮き彫りにしている。