実演鑑賞
満足度★★★★
あまりに戯画化されたコミック調の演技・演出で、悲劇らしくない。キャバレーやホテルの宴会シーンでは、歌と踊りもしっかり聞かせるエンターテインメントになっている。これで本当にデズデモーナ(モナ、松井玲奈)を殺して、オセロ(オセロ、三宅健)も死ぬのだろうかと、変な興味で最後まで見てしまった。「オセロ」も細かいところは忘れていたのだが、後で確認すると、配役、物語はほぼ原作に沿っている。市会議員三ノ宮(粟根まこと)はロダリーゴ、ハンカチならぬ岩塩(!)をアイ子(高田聖子、イアーゴ)に渡す女はエミリア、汐見(寺西拓人、キャシオー)の愛人はビアンカなど。
イアーゴを、組の死んだ親分の妻(高田聖子)と、年配の女性に変えたのが斬新。高田聖子の極道の妻らしい、啖呵とすごみがよかった。シェイクスピアのゴテゴテしたセリフはかなりすっきり整理されていた。その分、名言、名文句も少なくなっていた気がする。
翻案で新たに、デマの怖さが強調された。オセロの悲劇も嫉妬による、というだけでなく、デマで狂わされたものだし、オセロ(日系ブラジル人の設定)のブラジルの父も、「勝ち組・負け組」のデマによる対立で殺された。またアイ子の父も、関東大震災の朝鮮人虐殺(井戸に毒を入れるなどのデマによる)の犠牲になった。オセロは、そんな父を持つから、「組長になっても、横暴にはならず、下々の声のわかるはずだ」というのは、きらりと光るところだった。(たしかアイ子のセリフ)
3時間40分(休憩20分込み)と、上演時間は結構長い。