アルト声の姉妹 公演情報 チャカチャカプロデュース「アルト声の姉妹」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/03/10 (金) 15:00

    座席1階

    青年座のベテラン松熊つる松の演劇人生30周年記念企画の一人芝居。東京ハンバーグの大西弘記が、松熊が書き留めたエピソードを構成して脚本をつくった。アフタートークによると、98%は松熊が書き留めたものだという(創作部分はほとんどない、とか)。故郷に残って父や母と暮らした姉と、上京して劇団に入った妹の微妙な関係性を描いた物語。家族の物語を得意とする大西脚本らしい、広がりと深みがにじみ出たいい舞台だった。

    両親は先生だったといい、姉妹は児童演劇に入っていたこともあって幼いころから演劇鑑賞に触れていたそうだ。どこの家庭もそうだと思うが、進学や就職で故郷を離れてしまうと実家との距離は物理的にも心理的にも遠くなる。姉妹が分かれてしまうとその距離感も広がり、特に仲がいいということでなければ電話もあまりしない。しかし、父母が亡くなり、姉妹も人生経験を重ねて還暦が近づく年になると、離れていたそれぞれの人生の放物線が再び、重なっていく。

    松熊が自分(妹)と姉を演じ分けるのだが、声が似ている(アルトの声)ということで客席に違和感を抱かせない。さらに、舞台脇につるされたいくつかの服を羽織ったり脱いだり、はだしだったり靴を履いたりで姉と妹のメリハリをつけているのはよかった。サングラスなどの小道具も効果的だった。
    姉と妹の胸の内をさらけ出すせりふにもメリハリがついていて分かりやすい。ただ、妹の立場からのエピソードであったり、気持ちの揺れだったりするのが基本だから、妹の言葉や行動を姉がどう思っていたかというところが少し弱い。そこは、舞台を見ながら想像するしかない。姉は今回「私のことをネタにするの?」と言っていたというが、姉にも脚本家が話をじっくり聞いて重ねていったら、また違う物語になったかもしれない。

    「自分がどう生きてきたかを記録するのは、自分は演劇しかない」というようなせりふがあったような気がする。自分の来し方を客席と共に記憶していけるというのは、俳優ならではなのだなあ、と思いながら下北沢を後にした。

    0

    2023/03/10 19:18

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大