実演鑑賞
若い頃に大人気だったモームは最近はすっかり読まれなくなっているようだ。1932年の作品で、かつて民芸で上演したと言うが見ていない。どんなものだろうと観にいった。
この時代の英米演劇のドラマには一種独特の世界があって、一見わかりやすそうだが、舞台で見るとよくわからないところもたくさん出てくる。意外に難物だ。ちょっと後になるがプリーストリーの「夜の来訪者」(刑事の来訪)は、今でもよく上演されるが、日本初演の時(内村直也・翻案)から舞台を日本に翻案していて、それは今も(八木柊一郎・翻案)引き継がれている。このドラマで言えば、幕開きのイギリスの田舎豪族の一族の賑やかなパーティが終幕の形だけは同じだが、荒廃しきっているところなど、モーム得意の仕掛けだろうがうまく効果を上げていない。三姉妹の田舎の生活へのそれぞれの対応も表面的にはわかるが実感が伴わない。だから、それぞれの決意が人間的に伝わらない。せっかく、翻案とまでタイトルにしているのだから、もっと手を入れても良かったのではないかと思う。
本を見に行ったので、舞台については言うこともないが、もっと易しい、俳優が手の届く脚本でやれば良いのに、とおもった。