実演鑑賞
満足度★★★★★
バンタムクラスステージ細川博司さんが近年目をかけている若手作家の作品を手練れ俳優に演じさせる企画の1回目。
モンコックハウス主宰鈴木佑輔さん作「ナラティブ・アプローチ」、劇団中馬式主宰中馬真弥さん作「ミッドナイト・ホットスナック」いずれも自団体で上演済みの作品だがわたし自身は未見の状態で観劇。
「ナラティブ・アプローチ」
静かに淡々と物語が流れていく。起承転結を追ってみるとたしかに起承転結があるのだけど、悪く言うなら"メリハリが無い"。そして場面転換や暗転が多く、さらに暗転明けが電話の着信音ということが多い印象で、これは今後技術的に洗練できるものと断言する。
個人的には淡々とした作品は好きで今作も好感。しかし中だるみを感じた観客はいたと思う。
不要なんじゃないかというエピソードもあるし、電話で済ませられる内容で直接会いに行ったり、いくら40年経っているとはいえそんなにうまく行くかなという感覚もあり。
とまあ、悪いことを書いてしまったが。
手練れの俳優陣は全員が素晴らしかった。
小沢和之さん演じる52歳のアレンには塀の中にいた時間を感じさせてもらったし、中川むっくさんのハリー・佐藤圭右さんのブレイク・土矢兼久さんのビリーも繊細かつ納得のいく演技で実在感があった。ストーリーテラーでもあった弁護士ジェームズ役の土田卓さん、アレンを厄介に感じる冒頭からお人好しの本領発揮で見事な準主役。ジェームズの家にしょっちゅうやってくる殺し屋にして組織からの連絡役なリアム役福地教光さん、ジェームズの"兄"としてたくさんかわいい表情を見せてくれた。冷徹なようでいて弟には甘く、弟同様のお人好しであることが分かる物語の流れが心地よかった。作中で異質な存在である少年アレン役佐藤智広さん、要所で良い芝居。
良いお話だし、演出も好きです。伸びしろがまだまだある。まずは「アナザーエンディング」がんばってください!
「ミッドナイト・ホットスナック」
なかなかに解釈を観る者に委ねる作品。とてもアリです。
しかし観ながらしんどかった苦笑。
生身で演じられる舞台ですから、登場人物がしんどい思いをしてると観てるほうもしんどくなってしまう。「ナラティブ・アプローチ」が米国の話で外側から見る安心感ある話なのに対し、こちらは自分がまるで物語の内側に入りこんでしまうような感じ。
それだけリアルな感じがしたということだし、特に森岡悠さんの咲良ちゃん、良かったです。時間をかけてコミュ障を脱する姿は正直言ってまぶしい。なかなか変われないものなのに。
馬渡直子さんと緒方ちかさんの、味方なのか敵なのか、良いひとなのか悪いひとなのかを読ませないお芝居さすがでした。そういうところに深みを感じるんですよね。
難しいのは鶴田葵さん。ゆきちゃんはしたたかで、強い。それをあの透明感が覆って隠していた印象。面白く観させていただきました。
最後をどう解釈するかは本当にひとそれぞれで、Twitterの感想には自分の中にはまったく浮かばなかったものもあり興味深かった。正解の無いえがきかたは細川さん好みですよね笑。
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作品とは別のところで。
パンフレット、もうちょっと良い紙を使ってください……ペラペラが過ぎます。。。
それから、対談ページのデザインがひどすぎます。
収益を出すことは大事なことと理解してますが、せめて、対談のタイトルとか、参加メンバーの一覧とか、写真とかを入れて見やすくして、ページ数を4ページ増やしてもよかったんではないでしょうか。。ビジュアル写真の画質(解像度)も、もっとちゃんとしていたはずなのでは。
美術もね、そろそろ見飽きてきましたね……素舞台でも、いいんですよ?
シアターKASSAIの下手4席を着席不可にするの、やめていただきたかった。あそこが好きなひとたくさんいますよ。後から来たひとはその外側でもじゅうぶん観られます。