実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/02 (木) 14:00
青年座のメンバーが居酒屋で盛り上がり、「自分たちで納得できるおもしろい芝居をやろう」と結成が決まった「マグマ∞(フォーエバー)」。作・演出に田村孝裕を迎えての初公演というので、観ないわけにはいかない。浅草の奥深くへ観劇に出掛けた。
舞台はその浅草にもありそうな、昭和の空気を重く引きずる雀荘。かつて、雀荘は大学のある街とか下町とか、そこかしこに存在したのに、昭和が過ぎ平成の世になって少しずつ姿を消してしまった。浅草は今も、昭和の空気をまとった場所が残っているだけに、浅草を上演の地に定めたメンバーたちの思いが伝わってくるようだった。
そしてその雀荘は、今、高齢者たちを中心にはやっている「飲まない、吸わない、賭けない」の健康麻雀などどこの世界かという「昭和」だ。ビールを飲みペヤングのソース焼きそばを片手にリーチをかけ、たばこの煙でトイメンの顔がかすむという環境で徹夜をし、最後は勝者も雀荘代を差し引くとマイナスになるという、学生時代の「徹マン」を思い出す舞台セットだ。
まあ、こういう雰囲気を味わえたらと期待して出掛けた自分はまず、来た甲斐があった。物語はこの雀荘を経営する姉妹をキーパーソンにして、夜な夜な現れる常連たちの人間関係を描く。ここに現れるのが、この雀荘を買い取ろうという女(松熊つる松)と、「近くに住んでいるから」と現れた謎の未亡人(ひがし由貴)。物語は「もう、この店を閉めてしまおうかな」と時代の流れで消えていくような世間の雀荘と同様な空気が描かれていく。
さらに、この雀荘も時代の波に洗われるように、健康麻雀への流れにはあらがえない。ラストシーンは何となくハッピーかもしれないが、見終わったあとの寂しさは時代に取り残されたような人たちの心をえぐっていく。