満足度★★★★★
美しい時間
過去を、その美しさや醜さも含め、どのようにビビッドに記憶し、記録していけるか――。それは、芸術にかかわるものにとって、中でも「時間」を扱う演劇にかかわるものにとって、非常に重要なテーマだと思います。この作品にはそのことへのとても真摯な取り組みがあると感じました。
学童保育を舞台にした、ささやかで繊細な人間模様を再現していく舞台は、にぎやかでポップなおふざけや遊びにあふれているのですが、決してアイデアの面白さだけに終始しているわけではありません。
「ある時、ある場所、ある人びとのあいだにしか共有され得ない時間」を扱うという(普遍的テーマ)の前では、その遊びさえ、輝かしい1回性を持つのでしょうし、実際、劇場ではそれを媒介に多くの人が「繋がっている」感が演出されていました。(対面の客席の笑顔の多さにはちょっと驚きました)
人生には美しい瞬間があります。しかし、人はその時、それを自覚することはできません。
ですが、この芝居のラストのような輝きを通じて、その瞬間を思うことはできるのだと思います。