血の婚礼 公演情報 劇団東京座「血の婚礼」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    戯曲は面白い。マカロニ・ウエスタンのように情念がゆらゆらと静かに立ちのぼり、美しく激しくあっという間に散っていく。これは何度も上演したくなる作品だろう。
    誰もが連想するのは『嵐が丘』。ヒースクリフとキャサリンの亡霊が荒野を彷徨い続ける様。

    DIY感の強い舞台美術。左右の柱に紙皿やフォーク、ナイフが塗り込まれた工夫。予算がなくても情熱でカバー。手堅い日常ドラマではなく、フェデリコ・ガルシーア・ロルカに挑む姿勢を支持。武器は無限の想像力だけ。

    実質的に主人公である、一条政美(まさとみ)さんがこの地に生まれた一族の宿業を滔々と語る。
    鈴木みのる調のバリアートで老婆役、穴山ジョウジ氏は座頭を彷彿とする動きで印象的。脚が異様に細い。
    遠藤愛生(あい)さんは小池栄子系の顔立ち。

    スペイン南部アンダルシア地方の荒れ野が広がる町。因縁のある一族同士の結婚式を前に、不穏な空気が流れている。夫と長男を争いで亡くしている母は息子の結婚相手が気に入らない。唯一残った息子だけを生き甲斐にしてきた。花嫁は以前従兄弟の男と交際していたが、その男は家庭を持ち子供もいた。

    ネタバレBOX

    原作通りだが、ラストの花嫁が花婿の母親に会いに来るエピソードは不要。何があったか想像させるだけで充分。これを描くならもっと母親の比重を作品内で高めないといけない。
    演出が力不足。もっと攻めていかないと、この戯曲に太刀打ちできない。勝手な独自の解釈で自分の作品にして欲しい。

    「世界の果てまで俺を連れてってくれ
     潰れていってもいいんだ 失うものは何もない
     冷たい水晶を今夜お前と食べよう
     喉が切れても構わないから」

    「お前は帰るとこがない だからここにいる
     俺は行くべきとこがない だからここにいる
     激しい光の中で二匹の虫が目を焼いた
     今更飛び立とうとは決して思わない」

    スターリン『STOP GIRL』

    遠藤ミチロウの声が聴こえてくるような二人の逃避行。

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    2023/01/22 05:31

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