実演鑑賞
満足度★★★★
離風霊船を見るのは何年ぶりだろう。松戸俊一も伊東由美子もすっかり老年に達している。あとは知らない顔ぶれだ。エッ? 三十年ぶり?まさか。霊船に乗ってきたか。
そういえば、あの時代にはメタシアターが大流行だったな、と思い出す。いまはこの離風霊船という劇団名も、意図不明のとんがった感じだが、かつては、「遊◎機械全自動シアター」とか「秘宝零番館」「自転車キンクリート」に「ブリキの自発団」「第三エロチカ」とサーカス小屋のようなネーミングが並んでいたものだ。その中に、今に続く「夢の遊眠社」も「ナイロン100℃」も並んでいたとおもうと時代の変遷に懐かしいだけではない感懐がある。
舞台は、ご本家メタシアター「作者を探す六人の登場人物」そっくりに、脚本家の前に登場人物たちが現れるまっとうな趣向で、ネタになる劇中劇は「東海道四谷怪談」に脇筋では童話の「桃太郎」。人物配置も筋も四谷怪談を追っているが、今の若い観客が入り組んだ人間関係を知っているかと、心配になる。結構、劇団消長に絡ませて筋、配置はしっかり追っている時代劇のだ。
1時間半ほど。観客約半分強。時々笑いも起きるが、劇場の熱は上がらない。この劇団らしい伝統で残っているのは、人間の手で、細かい舞台トリックを全部やってしまうところで、ほとんど裸舞台で時代劇をやってしまう。劇団創立者で岸田戯曲賞も受けた大橋泰彦はいまどうしているのだろう。確か、この劇場であのシンではないゴジラが出てくる芝居を見た。