実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
自分に信念がないというか、嫌われるのが怖く いい子ちゃんとして育った女性とその周りの人々の人間模様を描いた物語。彼女の職業が留置所の留置担当官という設定が秀逸。そこにある檻は、自分の心の囚われの象徴である。逆に檻の中の被疑者の心は自由奔放といった対比で描いており、そこに見えない心の檻と実際にある檻の奇妙な面白さを表現する上手さ。
この留置所担当官(部長) 真山カヲル子役は、当初、今藤洋子さんが演じる予定であったが、稽古中の事故で降板した。そのことは劇団ホームページや本人のTwitterで知らせている。その代役として観た回から関絵里子さんが演じていた。前説では、急遽のことであり 台本を手に持っていることを説明していたが、敢えて言わなくても、何となく関係書類を持っているようで不自然さはない。逆に妙なリアリティが出るという演出の妙を感じる。
タイトル「恥ずかしくない人生」<フライヤー絵柄も囚われのよう>は、警察官であった父の最期の言葉、そのトラウマが心を縛り付ける。真面目に生きようとすればするほど、その呪縛に囚われ、逆に人に利用されるといった悪循環に陥る。それを留置所ではあってはならない「パワハラ」という台詞に集約させる。留置所という場所は打って付けの設定であり、更に 登場する男2人の身勝手さを描くことで女性の悲哀が…。色々な意味で対比させる事を描くことで、そこに内在する問題や課題が浮き彫りになる。
舞台美術も見事で、冒頭は留置所の外と内(職場)を表し 人間臭さ(衣裳を含め)ーそこに生身の女性を強調させているかのようだ。そして徐々に蝕まれる心の均衡、それは天井部の格子が…。実に緻密に計算された演出だ。そして 彼女を追い詰める職場の仲間や被疑者の面々、そのキャスト陣の確かな演技がこの公演を支えている。
(上演時間1時間35分 途中休憩なし)追記予定