農業少女 公演情報 東京芸術劇場「農業少女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    初日に
    10年前の初演はチケットがとれずにあきらめたのを覚えている。海外の役者で上演したこともあったようだがそれは見ておらず、今回がやっとこさ初見。

    ネタバレBOX

    九州の田舎の農家から、東京に憧れて、農業を嫌って、上京する娘を演じるのが多部未華子。最近はほとんどテレビを見なくなったので、彼女がNHKの朝のテレビ小説で主演した人だということも知らなかった。役の設定ではたしか15歳。本人の見た目から判断して、ぜったいに10代だろうと思ったが、あとで調べたらもう21歳なんだね。骨太で健康的な感じが農業少女というキャラにはぴったりだった。農業少女というのが、秋田小町なんかと同じように、お米の銘柄だというのは意外だった。田舎を嫌って、家出同然に東京へやってきた娘がやがて都会の色というか毒に染まっていく。その辺の展開にふと既視感を覚えたので、あれこれ考えているうちに浮かんだのは、つかこうへいの「熱海殺人事件」で容疑者の青年に殺される同郷の娘のこと。登場人物の男女比率は違うけれど、どちらも4人芝居だしね。田舎と都会というモチーフもなんとなく似ている。
    ただ、つか作品では田舎から上京してきた青年の純情がメインになっていたのに対して、野田作品では都会への憧れとか農業に対する負のイメージという、社会全体を包む価値観、あるいは気分といったものがテーマになっているようだ。

    吹越満が演じるのは、気まぐれな社会の気分を体現して、AVからエコへ、さらには政治へと無節操な転身を計る怪しげな男。多部の演じる田舎少女の誘惑者でもある。

    毛皮族の芝居をしばらく見ていなかったので、久しぶりに見るエモジュンこと江本純子はだいぶ歳をとったように見えた。短髪で金色に染めているせいだろうか、中村メイコにちょっと似ていると思ったのはきっと私の気の迷いだろう。もっぱら吹越が演じるキャラクターの子分的な存在だった。

    山崎一は毒草を調べるのが趣味のオタク的な中年男で、利用されているとも知らずに上京したての少女の面倒をみる。歳の離れた娘に翻弄されるその姿は、映画「嘆きの天使」で、若い女に惚れて身を滅ぼす大学教授を彷彿とさせる。

    野田秀樹が演出したものを見ていないので、今回、松尾スズキが演出したといっても、どの辺までが野田脚本で、どの辺までが松尾演出なのかがよくわからない。美術面でいくらか違いがあるとすれば、雑然とした状態が最初にあって、装置や道具をとっかえひっかえしているのが今回だとすれば、野田演出の場合は、少なくとも私がこれまでに見た範囲では、最初は意外と簡素な舞台装置で、芝居が進むにつれていろんな趣向が現れるという形だったように思う。

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    2010/03/02 22:09

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