三日月に揺られて笑う 公演情報 タニマチ金魚「三日月に揺られて笑う」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    コメディ? ホラー? コメディ?
    登場人物は最小限だが、互いの関係と、バックボーンがうっすらと見えるような土田英生さんの脚本がうまい、キャラクターがはっきりしていて無駄がなく、それを演じているすべての役者がいい。
    上演時間も含め、コンパクトなところもいい。

    そして、何より、コメディとしてきちんと笑わせてもらった。

    ネタバレBOX

    遊覧船の乗り場を舞台に、近所でも仲が良いと評判の、割といい歳(笑)の3姉妹と、遊覧船のオーナー(出資者)、遊覧船の若い船長(操縦士)の物語。
    観光客が減少し、遊覧船はあまり賑わっていない。
    若い船長は、三女に好意を寄せ、気持ちを打ち明けるが、姉妹たちには笑われてしまう。
    そんなのんびりした話かと思えば、実はここにはもっと大きな秘密があったのだ。
    それは、次女の高校時代の同級生であったオーナーが、20年間もの間、3姉妹それぞれと(タテマエとして)秘密にして付き合っていたのだ。
    オーナーはそのことに苦しみ、ついに3姉妹に別れを告げる。そして・・・。

    3姉妹は一時長女が都会に出て働いていた時期以外は、ずっと一緒にいたのであろう。だから、笑うツボも、お互いの気持ちも言わなくてもわかるような状況だ。
    その緊密な中に入るのは、何人とも無理なのであろう。

    だから、若い船長が、自分の何が笑いの対象になっているのかがわからない。もちろん、笑う3姉妹にだって言葉にして説明できないぐらいの共有する感覚なのだ。
    姉妹(兄弟)にしかわからない、小さな頃からの符丁みたいなものって、あるよなーっていうのを思い出したり。
    そんな緊密さは、他人から見たら、濃密すぎてちょっとイヤな感じさえする。
    しかし、3姉妹と20年も付き合っているオーナーには、そのニュアンスが何となくわかるというあたりがうまい。

    つまり、脚本も演出もうまいなぁと思うし、3姉妹の呼吸のぴたりと合った演技も素晴らしい。また、すでにいい年齢に達している姉妹の妙なハイテンションの痛々しさが、「ありそう」な感じがしてしまうところもいい。そういう感覚に切なさがある。
    そして、男性2人と3姉妹との温度差が、微妙にあるという様子を見せる演出と表現もいい塩梅だと思う。

    オーナーから別れを告げられた3姉妹は、一時は、まるで自分自身の醜さを見せ合ように、罵り合うのだが、吐き出してしまえば、後は怖いモノはまるでなくなる。
    唯一、「恋愛」という要素で3姉妹の心の中に入り込んでいた遊覧船のオーナーとの関係よりも、結局は姉妹の結束のほうがはるかに強かった。
    絶交状態から、話し合い、結論を出すまでが早かったことでそれはうかがえる。

    互いに気がつきながらも、知らないフリをして、隠れて付き合っていたオーナーとの20年間よりも、生まれてからずっと一緒だった姉妹の関係のほうが強いのだ。

    もちろん、オーナーとの関係が不倫であるということから、成就されにくい恋愛であるということもあるのだろうが。

    3姉妹が仲直りをしてからの、いくつかのフリの後、まさかと思いつつも、さらりと訪れるラストはかなり怖く、ブラックコメディになっていく。
    しかし、本当に怖いのは、若い船長との関係が見えてくるあたりで、ここはホラー感さえ漂う。笑っちゃうんだけど(笑)。

    関西の劇団なのだが、なぜか関西弁でないのだが、それには理由があるのだろうか。関西弁だと笑いの方向が変わってくるからなのだろうか。
    なんてことを思いつつも、次回も観たいと思う。

    三女の「唄」は耳に残ってしまった。
    わーたしたーちはなかのいい、さんしまいーですぅ。

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    2010/02/28 01:05

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  • KAEさん

    コメントありがとうございます。

    詳細ってことはまったくないので、お恥ずかしい限りです。
    観てない方には、丁寧ではない感想を書いていると思っています。
    あらすじなどほとんど書きませんので。

    今回の舞台は、土田さんっぽい雰囲気に溢れていたと思います。たぶんこの劇団の3人とは旧知の仲であり、当て書きのような感じで執筆されたのではないか、とも思うほどです。
    ・・・ちなみに、カーテンコールのときの話で、「土田くん」と呼んでましたので、その上下関係(単に年齢?笑)は推して知るべしですが(笑)。

    2010/03/01 06:47

    アキラさん、こんにちは。
    いつも詳細なるレビュー、拝読させて頂いています。
    この舞台は大変気になっていたのですが、時間がなくて観劇できませんでしたので、アキラさんのご感想と粗筋を読んで、だいたいの雰囲気が掴めました。
    最後の、3人の歌、まるで、私の耳にも聞こえたような気さえします。
    土田さんの作品は比較的好きで、よく観るので、アキラさんの書かれたものと、日頃の土田さんの作風から、舞台を想像することができました。
    ありがとうございました。

    2010/02/28 01:19

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