早起きの人 公演情報 薔薇ノ人クラブ(黒沢美香)「早起きの人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 宮廷の人?
    黒沢美香が以前からやっているソロ・ダンス公演「薔薇の人」シリーズの第13回目。私自身はこれが3回目くらい。上演時間は80分ほど。背もたれのない窮屈な座席で見るのがつらかった。

    ネタバレBOX

    毎回、けっこう奇抜な衣装で登場するが、そっち方面は疎いので、表現する語彙が不足している。上は白いブラウスふうで、胸元にフリル。下はゆったりしたグレイっぽいズボンで、きらきらしているのはラメだろうか。印象としてはブルボン王朝のフランス宮廷あたりにいそうな雰囲気。ただ、髪型は二つのお団子ふうにまとめたのと、1本の辮髪ふうに束ねたのが同居していて、そちらはなんとなく中国風。
    太鼓を叩くバチのような棒を何本も入れた金属製のボウルを抱えて、舞台奥下手の出入り口から、ノリのいい音楽で登場。いつになく活発な動きなのと、前述の扮装とがあいまって、バレエの「くるみ割り人形」に出てくる中国の踊りっぽいものを連想した。
    開演前から舞台にはセットが配置されている。下手にはコンロや台所用品をならべた調理台。上手の奥には物干し台に椅子。手前の客席寄りには水を入れた透明なボウルがこれも台に載っている。レンガ大の石が一個、床の上、隅には布切れも落ちている。

    黒沢のソロダンスではところどころで音楽や照明の段取りを決めて、間では即興をやるということが多いような印象を持っていて、それは今回も変わらなかった。振り付けた動きかそれとも即興かを見分けるのはむずかしいものだが、振り付けたにしては静止する時間がやけに長いと感じることがたびたびあるので、その辺から即興をやっているのだろうと判断している。実際は終演後にでも本人にじかに聞けば早いのだろうが、わざわざそこまでするのもねえ。

    金属製のボウルに入っていた棒を椅子の周辺の床に並べる。そのあとはまず、物干し台に布切れを架け、端っこにあった箒を手に取ってひとしきりもてあそぶ。次にボウルの水に手を浸す。さらに下手の調理台を中央に移動させ、用意してあった器から白いどろっとしたものをコンロのフライパンに注ぐ。どうやら火がついていたようでやがてパンケーキのようなものが出来上がる。缶詰を開けてパイナップルを二切れ、パンケーキの上に乗せる。調理の際、腰に巻いていた紅白模様の布をたたんでランチョンマットとして椅子の上に敷き、出来上がった料理の入った皿をその上にのせて椅子の前に正座。フォークとスプーンを使い、行儀よく、時間をかけて平らげる。

    登場の際の活発な動きはまもなく影をひそめ、炊事洗濯などの家事労働をダンス的な振る舞いの中でこなしていく。過去に見た公演でも、こういう日常的な行動も広い意味でダンスとして捉えるというスタンスでやっていた。たとえば、机に座って手紙を書いてそれを封筒に入れるといった一連の動作。一見、演劇のようでもあり、またマイムのようでもあるが、本人の意識としてはたしかにダンサーとして舞台にいるのだろう。

    やがて家事や食事も片付いて、彼女は横になる。この辺で自分なりにドラマ的な状況設定を想像してみると、おそらく彼女は宮廷のお抱えダンサーだろう。きょうはもう勤めはないだろうと思って横になったとき、急にお呼びがかかる。そしてなぜかは知らないが椅子の上で着替えをして、御前に参上。床に散らばっていた棒を奥に片付ければ場面転換も完了。終盤のクライマックスにふさわしいダンスのお膳立てができた。

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    2010/02/27 00:12

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