知らぬは探偵ただ1人 公演情報 空想実現集団TOY'sBOX「知らぬは探偵ただ1人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    物語は、終わることがない繰り返しの探偵小説または推理劇に込められた悲哀のよう。しかし けっして暗くなることはない。表層は面白可笑しく描かれているが、登場する人物は、いつも同じような役割で果てることはない。この不思議な世界観を読み解くことが出来るか、そこに公演の狙いがある。

    中盤以降、なるほど 説明にあったメタフィクショナルコメディという意味が解り、それまでの疑問が解けるような気がするが…。事件は現実に起きているのか否か、その混沌とした状況を楽しむもの。
    (上演時間1時間35分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    ほぼ素舞台。上演前から死体らしき人物が横たわっている。舞台中央にパイプ椅子が横並びに6脚。うち1脚が倒れている。何か所かに死体の形跡を示す。椅子はあまり使用せず、ほとんど立ち演技で、時々ダンスも披露する。
    少しドタバタし大声での会話も、この小空間ではもう少し声量を抑えたほうが 台詞は聞き取りやすい。

    物語は現実ではなく、探偵小説または推理劇という架空の世界で繰り広げられている。登場人物は、小説や劇中で、同じような役柄を宛てがわれ、果てることなく演じ続ける。そんな世界に 冒頭の死体らしき人物が紛れ込み、虚実綯交ぜの様相を呈してくる。
    メタフィクションは何でもありの世界観を現すことが出来るから、作中に伏線を散りばめる必要がある。この公演では作中の登場人物と現実の人間(女性)を同化し、さらに高次元〈異次元だけではなく虚実の両方〉の存在としての役割を与えることで、メタ化を表現している。さらにコメディ調にすることで非現実という印象を強調する。

    女性は他殺ではなく、自殺したが死にきれず彼岸と此岸の間〈もしくは既に冥界か〉ような場所、それが小説なり劇中という場所=世界に置き換わる。彼女は 架空の世界に居る人々と自由に動き回るが、何となく作者によって恣意的に動かされているよう。架空世界では探偵以外〈その意味では蚊帳の外〉の人物が謎解きに挑んでいるが、それらも全て作者の意中のこと。外の世界から俯瞰するように描いているようだ。

    架空の物語から現実(生還)の世界へ戻れたのか。それをカーテンコール後に改めて上演前と同じように横たわり、徐にムクッと立ち上がる。その演出は、離れ業ならぬ本番離れ演技として観せる。ラストシーンによって 改めてメタフィクショナルということを印象付ける巧さ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/12/26 18:25

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