藤島土建 公演情報 トム・プロジェクト「藤島土建」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    父と息子の対立、自らの中にある葛藤がコトバに込められる
    前田吟さん、角替和枝さんのベテランたちが特に素晴らしい。
    重みがあり、軽妙さもある。

    緊張感を持って、集中して観ることができた。

    ネタバレBOX

    「土建屋」という言葉に代表されるような旧体質の父(社長)と理想論を振りかざし、新しい会社や社会を目指そうとする息子の対立を軸に、もっと大きなテーマが裏に見え隠れする。

    父は、言葉には意味があり、その言葉が生まれた理由があると言う。それだけに言葉を大切にしようとしている。だからこそ、若者たちの、言葉だけが先走り、その言葉の持つ怖さや力を理解していないことを嘆く。

    しかし、「土建屋」と自ら名乗ることに誇りさえ感じているのかと思えば、自らが行政や市議たちと結託し、官製談合や贈収賄を行っていることには、引け目を感じている。その引け目から、娘のように思っている女性事務員には自分の息子と結婚してほしくない、つまり、この汚い世界に引き込まれてほしくないと思っている。

    息子は、徐々に社長である父のそうした、村社会のルールにどっぶり浸かった行いを知ることになり、強く反発していく。官製談合と贈収賄の世界を裁ち切り、新たな会社を作り上げようという理想論を語るのだ。

    父と子の対立、古い村社会的ルールとの対立、そして、父親の中にある葛藤と、さらに息子の中にもある葛藤が複雑に入り込んでいく。
    そこに、息子と事務員の女性との結婚の問題が絡み合う。

    テーマがやや直接的で、説明的な台詞となっているところや、各々の複雑な想いが、いま一歩整理仕切れていないように感じてしまったが、役者たちの誠実な気持ちには、心を動かされた。

    ただ、ラストの息子の心変わりは、理想論を振りかざしているという気持ちが裏にあるとは思うものの、もうひとつ納得度が低かった。
    関東地方の地震とその災害情報(耐震偽装)のタイミングと、あまりにも、あまりも救いがなく、暗い幕切れは、ちょっとなあ・・・と思ってしまった。
    ・・・やけどした猫の名前は、ブラックすぎたし・・・。

    もっと軽妙な物語になるのではないかと思って出かけたのだが、結構重くて暗い。怒鳴ったり、声を荒立てるシーンが意外に多い。
    だから、もう少し全体的に笑いが多かったならなあという気持ちも残る。

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    2010/02/25 05:55

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