時代絵巻AsH 其ノ拾六『赤雪~せきせつ~』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 其ノ拾六『赤雪~せきせつ~』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    其ノ拾伍 『赤心〜せきしん〜』で武田義信を、そして其ノ拾六『赤雪~せきせつ~』で勝頼…武田家の悲哀が描かれている。本公演で続けて甲斐・武田家を取り上げているが、前作との関連をしっかり描いている。勿論、フラーヤーの絵柄である白百合である。この白百合は武田信玄と嫡子 義信さらに勝頼と親子の絆を表すと同時に、「威厳」(花言葉)を示しているよう。しかし全体的に赤色、それは武田軍甲冑の赤揃えだけではなく、何となく血=悲運を連想させる。劇中の台詞、罪なき人々の命が犠牲に…。舞台の中で描かれる勝頼像は、戦国武将としては純粋で心優しき者のようだ。

    時代絵巻AsH は、戦国という乱世の時代の それも巨星ではない人物に光を当てている。巨星とは違う人間味によって、単に「滅びの美学」だけではなく、如何に生きるかといった生き様を描く。信玄という巨星の後を継いだ勝頼、後世における比較評価、武田家を滅亡へ という事実、その概観に捉われずその人物の魅力を舞台化する、そこに時代絵巻AsH 灰衣堂 愛彩女史の力をみる。
    (上演時間2時間20分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは今までの時代絵巻 AsHの定番とは少し違い、正面から上手にかけて主に軍議評定する場、下手に櫓のようなものを作り立体化する。勿論 客席との間は中庭のような空間を作り殺陣シーンのためのスペースを確保する。上手下手の客席側には土庭があり、殺伐とした風景に憩いと生(植物)を感じさせる。出来れば この櫓へ階段を設え、その上り下りといった動作で躍動感を出してほしかったが…。
    細かいところでは衣装、例えば真田昌幸の陣羽織には六文銭の家紋があり、武門に対する拘りが観てとれる。

    物語は勝頼の幼少から討死までを時代の出来事(合戦など)を通じて順々と展開する。史実のような事実は描かれるが、必ずしも事実が真実とは限らない。その曖昧さにフィクションを持ち込み戦国時代ならではの権謀術数が怪しく描かれる。直接的な合戦シーンは織田・徳川の連合軍との長篠の合戦、織田の甲斐侵攻(最期は天目山)の2回だが、殺陣シーンを長くし観せ場を作る。赤揃えの武田軍、黒揃えの織田・徳川軍という一目瞭然の違いで視覚的に楽しませる。
    殺陣という派手な観(魅)せ場…その敗戦の中で 武田家譜代家臣との確執がなくなり、家臣から「命に軽重はないが、名前にはそれ相応の重みがある」と告げられる。そこに生い立ちから今迄の辛苦をさり気なく描く。

    また、あり得ない設定だが、勝頼と(織田)忠信がそれぞれの巨星の跡取りとしての境遇、そこに何となく相通ずる人間味を描く。が、冒頭の義信と勝頼の会話「守るべき事(人)」のために生きるという台詞が効いてくる。運命の歯車が狂い、自分が家名、領土、領民を守る立場になる。戦国時代ゆえ それぞれの領地と領民のためという前提の前には、たとえ人間的魅力があろうとも、どうにもならない 今でいう不条理が垣間見える。

    公演は、勝頼という不運の武将を情感豊かに描きつつも、全体としては戦国という時代絵巻を観せているようだ。ここに史実とは異なる物語性を起こし、さらに主人公の生い立ちと義信亡き後、武田家を継いだ悲運の武将を立ち上げる。そこに観客の同情、義憤を掴むという、劇的には巧みな描き方をしている。時代のうねり、勝頼の人間的魅力という社会・個人の両面をバランス良く描いた力作。戦国時代絵巻としての完成度は高い。舞台美術一つとっても創意工夫を凝らし 常に挑戦し続ける、その姿勢が素晴らしい。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2022/12/18 13:03

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大