僕等のチカラで世界があと何回救えたか【作:高羽彩×演:青木豪】 公演情報 ネルケプランニング「僕等のチカラで世界があと何回救えたか【作:高羽彩×演:青木豪】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    凄い!と素直に感じた
    流石に高羽の脚本だけあって、あの名作「プール」の世界観に似てる。そこに青木の演出が加味されて学校の校外の描写が懐かしい風景と共に広がる・・。
    RUN&GUNの4名のそれぞれのキャラクターの立ちかたは秀逸で更に優秀な出演者陣が加わったのだから、観ている方はタマラナイ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    丸子坂下中学校に集まってきた教育実習生4人が、織り成す群像劇。
    かつての同級生が教育実習として中学校にやってきた。序盤、彼らのそれぞれのキャラクターの見せ方が上手い。すぐにスイッチが入り熱血になるミキヒサ。ナイフのような狂気を隠しながらもやる気のないカジシマ。案外いいかげんだけれども、一番上手に世間を渡って行きそうな輩・・。

    これらの4人が忘れられない出来事・・・、それは彼らの同級生で7年前に殺人を犯した榊原の存在だった。特にカジシマは自分の可能性について異常なほど過敏になっており、榊原を「あいつは14で人を殺して14という誰でもない特別な存在になった!」とある種の宗教の教祖のような存在として捕らえていた。

    そんなカジシマは14歳のとき、豊という知能障害を持つ同級生を沼で頻繁に暴行を加えていた。ボコって教育、または遊びと称するいじめだ。一歩間違えたら自分が榊原になってたかも知れないと考え、一方で榊原になれなかった自分を「特別になれなかった」と悔やむ。

    「子供って凶悪なものなのだ。」と語る用務員の言葉がズシン!と響く。こんな言葉を吐かせる高羽は凄い!と素直に思う。「子供って残酷なものだ。」というのがワタクシの持論だが、「凶悪」という言葉をあてはめた事はなかった。こんなセリフを役者という媒体を使って吐かせ、こんな物語を描く高羽はやはり人並み外れた才能があると思う。早稲田を卒業して初の社会演劇を王子小劇場で発表した「プール」はなんと2008年5月のことだ。それからたった2年弱で紀伊国屋ホールで公演するという快進撃に目を見張る。

    ナイフで切り裂くなら、斜めからえぐるように切り込んでくるのが高羽だと思う。そんな凶悪な子供が教育や世間を流していく事で、真っ当な人間になると高羽は考えるのだろうか?それとも大人になるにしたがって誰にでもある狂気を奥のずっと見えないところにしまって秘めておく。ということなのだろうか・・?

    不登校で14歳の武の原がかつてのカジシマと同様に豊に「遊ぶ」と称して暴行を加え続けるが、彼の存在はまさしくミニカジシマだ。「死にたい」と思っているカジシマは死ぬ勇気さえなく「殺してくれ!」と仲間に訴えるも、そいつは「悪い、俺、お前を殺してやるほどお前を好きじゃない。」というセリフもグサリと刺さる!

    この世はどこか底なしで、何処にも特別はないかもしれないけれど、その時に生きた時間が彼らの生きてる証なのだと思う。だから・・、特別じゃなくてもいいのだと思う。過去と向き合い、大人へと成長する彼らの絶望と温もりを繊細かつ骨太な質感で照らしていく舞台だったと思う。笑いもそこここに散りばめられ、その言葉のセンスも素晴らしい!「プール!」好きな人にはお勧め。

    全員の演技が素晴らしかったが特に豊役のキャストが秀逸!
    最近、榊原を題材にしたエンゲキが多いが何か社会的な風評でもあるのだろうか・・?



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    2010/02/21 13:13

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