実演鑑賞
満足度★★★★
こりっちデータで見る限りだが、個人ユニットを立ち上げたり役回り様々な経歴あり、中で舞台美術経験に目が止まる。照明家とのユニットというのも興味が湧くが、中味は全くの未知数。
アトリエ春風舎は美術が映える小屋で、何本か吊された裸電球、簡素な机と椅子、床に置かれたタワー模型、床から壁へ続く光沢タイルの川、と言った具合。だが、開演よりアンテナ立ち通しになるのは耳と前頭葉で、これは聴いたことのない台詞である。
平易な言葉で語られる、物事の本質を探る思考。冒頭、「道具」を巡っての思考が始まり、その思考過程で用いた語を応用しつつ他へ広げて行く。その会話が遊戯のように、それが相応しいとある研究室の一角で交わされる。心地よい。幾つかの関係(人は三人まで)の模様が順に描写され、時系列で展開が進む線もあるが、物事を「裏側」から言い当てるトーンは芝居を通じて流れている。
丁寧に思考し、言葉を探し、選び、世界に放つ物腰そのものに、ある種の癒し、救われる感覚を覚える。その事だけをもっても現今のメインストリームへの痛快なアンチとなっている(と自分は感じた)。