オテロ 公演情報 東京二期会「オテロ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    嫉妬・裏切り・猜疑心・自責
    シンプルなセットながら、スタイリッシュでダイナミック。
    単純なストーリーだということだけでなく、登場人物の動きや配置が巧みで、どこを観ても「絵」になるようで、まったく飽きずに観ることができた。
    満足度は高い。

    ネタバレBOX

    オープニングの幕が開く様は、あまりにもカッコ良くしびれた。
    続く、嵐のシーンの激しさの幕開けを告げるようだ。

    舞台にあるセットは大胆で、手前から奥へ傾斜のある灰色の台が真ん中に大きくあるのみ。衣装も生成りのものや、黒や灰色の皮のようなものがほとんどで、少ない色であっても、そこに現れると映える。
    その舞台に上部から衝立て状のものが降りて来たり、部屋の箱が置かれたりするという至ってシンプルなものである。

    第2幕では、セットの下手に赤い布が広げられる。灰色の舞台に鮮やかな色が差し込まれる。ここは、イアーゴが副官のカッシオを罠にはめる悪事を思いつくシーンである。まさに赤い布は、イアーゴの腹にうごめく悪の象徴であり、イアーゴに騙されたオテロはその悪の布をイアーゴの手によってまとうことになる。

    第3幕は、オテロの心に妻デズデモナへの猜疑心が芽生えるシーンであり、その痛みを伴う感情は、舞台の下手に鋭く光る刃のようなセットに象徴されていた。オテロはその刃の陰から、イアーゴとカッシオの会話をなんとか聞こうとするのだ。

    さらに、舞台の一番高い場所では、イアーゴが全体の様子をうかがいながら、足下の砂(?)を払うと黒い面が現れる。
    そして、オテロは、妻への猜疑心の高まりとともに、その一番高い場所に行き、さらに砂を払い黒々とした面を露にしていく。それは、まさにイアーゴの手により、オテロ自身の心の中の闇が姿を現したようだ。ライトがそこに当たり、続くシーンの不安さを告げる。

    こういった象徴的で印象的な仕掛けが、物語の深みを見せてくれる。

    この物語は、途中までは悪役イアーゴが主人公であり、その憎々しさが増すことで、オテロの心の乱れや、イアーゴの策略により、オテロに疑われてしまうカッシオと妻デズデモナの哀れさが際立つ。

    特に妻デズデモナのオテロへの一途さが、悲しみを誘う。

    この舞台でのイアーゴの堂々さは、悪であることへの開き直りというよりは、それこそが当然とするぐらいの存在を示していた。

    イアーゴだけでなく、やや老齢というイメージのあるオテロも、役者の実年齢だけではなく、壮年といった様子で、若さとエネルギーが感じられ、軍人であるということが体現されていた。さらに、そのエネルギーのほとばしりゆえの上昇志向であったり、過ちであったりという感じがするのだ。

    オペラもときにはいいなと思えるような素晴らしい舞台だった。


    そう言えば、一昨年観た加藤健一事務所の『レンド・ミー・ア・テナー』は、このオテロが物語の中心にあり、カトケンがオテロに扮してオペラ歌ってたな、なんて思い出した。

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    2010/02/20 07:25

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