イーピン光線【作・演出 山内ケンジ】 公演情報 E-Pin 企画「イーピン光線【作・演出 山内ケンジ】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    不思議の国の団地妻
    一応、サスペンス・コメディって感じの流れだけど、現代口語演劇ふうの自然なやりとりのまま、現実か妄想かわからないシュールな世界に入っていくところがなんともいえず魅力的。

    ネタバレBOX

    駅前劇場とは思えないしゃれた空間。マンションの一室に集まって、知り合いの主婦4人が昼下がりのおしゃべり中。出会い系サイトを利用したとかしないとか。やがて仲間3人が帰り、ひとりになった主婦。もともとアル中気味なのか、卓上のワインを飲むうちにそのまま眠ってしまう。
    いったん暗転して目覚めた後、夫が帰宅。迎えにいくはずの息子の姿が見えない。そこに電話がかかってきて、息子を誘拐したという相手の声。警察に知らせようという夫、知らせたら息子が殺されるといってそれを制止する妻。
    ここまではサスペンスタッチ。すると玄関のチャイムが鳴って、先ほどの知り合いのうちの2人が心配そうに訪ねてくる。大変ねえ、息子さんが誘拐されたんですって、と慰める。ところがちょっと待て、いま犯人の電話があったばかりなのに、どうしてあんたたち、息子の誘拐のことを知ってるわけ?
    妻が問い詰めようとすると、話の腰を折られたり、別の訪問者があったりして、それ以上の追及が阻まれてしまう。通報もしていないのに二人の刑事がやってくる。夫の父親もやってきて、頼んでもいない身代金をすでにポケットに用意してある。
    この辺の展開は夢の論理というか、相当シュールな流れになっていて、どうやらこれは先ほどワインを飲んだ妻が、眠っているうちに見ている夢じゃないのかと思えてくる。
    現実からいつのまのか夢の世界へ移行するという点では、以前に見た五反田団の「逃げろおんなの人」と共通している。どちらも演技が自然であるだけに、よけいにシュールな印象が強まる。

    そんなわけで、途中までは妻の見ている夢だろうと思って見ていたのだが、そのうちに妻を演じる役者が金谷真由美からKONTAという人に入れ替わってしまう。周囲の人物もそれにいくらか反応はするが、特に怪しむようすもなく話はそのまま進行する。顔つきがちょっと変わったんじゃないか、たぶんストレスのせいだろう、で済ませてしまうのが可笑しい。

    芝居はさらに誘拐犯の夫婦と誘拐された子供、殺人や遺体処理を請け負う不気味な二人組、妻の兄や二人の精神科医らが登場して、予測不能な、そしてかなりショッキングな方向へどんどん転がっていく。これ以上の内容説明は私には無理。実際に芝居を見るか、脚本を読むかしてほしい。

    ラストも唐突。もはや妻の見ている夢なのかどうかもわからなくなっている。刑事の一人は数ヶ月前に母親を亡くしたが、時間が経っても悲しみは癒えるどころか逆に増すばかり。それで精神科に通っている。実はその精神科医というのが遺体処理請負業者の一人だという怖い設定だったりもするのだが、そのへんのツッコミは観客まかせで、台詞での言及はない。相談するうちに刑事はまた悲しみがこみ上げてくる。そういう症状はあなただけじゃない、と医者は慰める。前後の脈絡もなく、そこでにわかに暗転&終演。思わず、はぁ?と声を出しそうになった。

    勝手な勘ぐりかもしれないが、母親を亡くした刑事の悲しみを、盟友の深浦加奈子を亡くした山内ケンジのそれに重ねてみたりしたのだけど・・・

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    2010/02/11 23:47

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