実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
本来、真夜中に影法師を見ることはないが、そこに現代的な問題の数々を絡ませて 表現し難い世情を浮き彫りにした公演。厳密にいえば「現代」ではなく「今」を鮮明に切り取った珠玉作。
コロナ禍の三蜜には注意が必要だが、この公演の物語の緊密な繋がり、濃密な会話、そして綿密に計算したかのような舞台環境が素晴らしい!
物語は説明にあるように大括りでは、父が倒れ遺産を巡るトラブル、主人公夫妻が経営するギャラリーを巡る中傷誹謗、そしてコロナ禍におけるアートイベントの開催が危ぶまれる、といった問題が次々と起こる。それが個別の問題でありながら密接に繋がっていく巧さ。登場人物はわずか5人、それぞれのキャラクターと立場を立ち上げ、登場しない人物の姿や意見まで代弁するかのような濃密な会話。そして先に記してしまうが、セットはほとんどなく 素舞台と言ってよい。しかし、この会場ギャラリー&クラフト杜<もり>の構造・・客席正面にある 大きな一枚硝子窓を通して外景が見える。借景を活かした演出が、現実の世界と舞台と言う虚構の世界を巧く融合させている。まさしく虚実綯い交ぜの極みを観せる。
副題「芸術とお金、あと色々」は、芸術文化の世界、もっと言えばコロナ禍における小演劇界の実情をまざまざと見せるようだ。同時に表わし難い不安、焦燥そして今後も透けて見える。その”ぼんやり”とした感覚こそ、真夜中に薄く見えるかのような影法師を暗示している、と思う。
(上演時間1時間)追記予定