キョウカイセン 公演情報 JACROW「キョウカイセン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/11/21 (月) 14:00

    いつものJACROWと少し雰囲気が違って、今回は臓器移植がモチーフになっている。だが、結論から言うと、登場人物たちによる群像劇に近い。生と死の境目をテーマにした一晩のドラマである。

    舞台は病院の待合室。ゲリラ豪雨が続く中、救急搬送された男女二人のそれぞれの家族が登場している。男性の方は妻、姉夫妻と妹。女性の方は夫とその弟。意識不明が続く中で、男性は脳死状態に、女性は自発呼吸が復活する。
    脳死状態に陥り、医師は臓器提供を持ちかけた。何とか生きていてと願う家族に臓器提供の話は唐突であり、衝撃的だ。当然、当惑の極みに陥るが、女性の方の家族、すなわちその夫が「研修で教えたもらったことです」と断り、脳死とは何か、植物状態とはどう違うのか、意識が戻ることはあるのかなどについて冷静に語る。
    ここまで見ると、脳死という診断を受け入れるかどうかというドラマかと思う。ところが、そういう私の見立てをよい意味で裏切った。登場人物それぞれに脳死をどう受け入れるかなどについての物語があり、それが次々と明かされていく。
    増水した川に転落した二人が、片方が脳死で片方が植物状態とはドラマチックな仕掛けだが、やはりなぜ、まったく関係のないと思われるこの二人が同じ場所で川に転落して救助されたのか、二人の関係は何なのかというところに興味が移っていく。ただ、臓器提供を持ちかけられた家族の葛藤は舞台の最後まで続く。それはやはり、劇作家が描きたかったであろう点だと考えられる。最後までこの点を貫いた脚本は、JACROWらしいと言ってよい。

    俳優たちはオーディションで選んだといい、いつもの顔ぶれとは違う。それが新鮮でもある。家族の物語であるが、その家族は仕事に追われ会話を失い、肝心なことを伝えていない。こうした警鐘ともとれる作品だ。

    おもしろかった!

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    2022/11/21 19:17

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