実演鑑賞
満足度★★★
演出は菅田俊氏。宇梶剛士(たかし)氏と菅原文太氏の付き人(用心棒)を務め、仮面ライダーZX(ゼクロス)でもあった名俳優。
蝋人形サラマンダ役の佳村さちかさんが偉く美形だった。
扉役・森了蔵氏はジャンポケ斉藤に似た風貌の気が違ったテンション、舞台中で喚き散らす。
マルセル・デュシャンの墓碑銘、「されど、死ぬのはいつも他人ばかり」は寺山修司の大のお気に入りの言葉。
「死ぬのは皆他人、生きるのも皆他人、愛するのも皆他人」がテーマか。人が皆持つ埋められない心の隙間(存在としての寂しさ)を、他人を使って埋めようとする。ほんのひと時それが埋められたように錯覚するが矢張り寂しい隙間風が吹いていく。
理屈や論理を無視して作中人物が必死になって訴えるある種のロマンチシズム、つかこうへい的な昂揚こそが見所。うえのやまさおりさんの熱演でしんいちの心が絆されるシーンが印象に残る。うえのやまさおりさんは素晴らしい女優だ。
寺山修司の愛用したデニム地のサンダル(今回は違った)を移動探偵社と称して、寺山がかつて覗きで捕まった町内に現れる探偵田口(永倉大輔氏)。転がる林檎を追ってきた。
そこに現れるのは前の探偵事務所の社長である扉(森了蔵氏)と蝋人形のサラマンダ(佳村さちかさん)。かつて田口はサラマンダと愛し合っていた。
事故死した恋人の移植された角膜を追うくるみ(うえのやまさおりさん)は、結婚直前のサラリーマンしんいち(贈人〈ぎふと〉氏)に付きまとう。その角膜には印象的な傷があり、“ジャガーの眼”と称されていた。