ぼくのはははははのはは 公演情報 エムロック「ぼくのはははははのはは」の観てきた!クチコミとコメント

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    満足度★★★★

    物語は、人生で多く使うであろう言葉「ありがとう」と「ごめんね」、それを家族に向けて使わなければならない事情が本筋。多くの登場人物が織り成す人情豊かな下町風景を生き活きと活写するのが脇筋。公演は、本筋と脇筋が絶妙に絡み、銭湯を営む家族と常連客のドタバタ劇の中に、人の悲しさ切なさ、そして優しく労わるといった多くの感情を紡いでいく。

    舞台美術は、銭湯の男女浴場へ通じる共用スペースをリアルに作り込む。久しく銭湯へ行っていないが、あぁこういう作りだったと懐かしく思えるほど よく出来ている。この場所だけで人の過去・現在そして これからも現している。太田勝版 人情劇は観応え十分だ。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)【Bチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に段差を設けた座敷にテーブル、中央は銭湯の出入り口の引き戸、下手奥は男・女浴室前の暖簾、客席側に番台(受付)がある。よく見かける扇風機、マッサージ機そして冷蔵庫が置かれている。

    この銭湯は杉野家が営んでおり、祖母(志保子<秦 和子サン>)とその娘4人、そして男(光輝<水瀬元春サン>)、女(あい<遠矢ひこのサン>)の孫の計6人がいる。本筋は、孫の光輝から見た家族への わだかまり、その振る舞いに辟易している周りの人々の「ごめんね」の話であろう。一方、この銭湯へ通う個性豊かな常連客が巻き起こす騒動が脇筋として下町の光景を描き出す。
    そして何故 光輝が反抗的な態度をとり続けるのかといった核心へ迫る。先に4人姉妹と記したが、光輝の母(登場しない長女)は幼い彼を残して自死した。その理由は明らかにされないが、彼にしてみれば何で母を守ってくれなかったのか、そのやり場のない憤りを家族(残りの3姉妹=叔母達)、特に祖母・志保子に向ける。この実孫との対比で、親の愛情を知らない養護施設育ちの篠崎咲花(空みれいサン)を登場させる。志保子が養護施設で働いていた頃、この子を引き取って育てた。今では志保子のことを「おかあさん」と呼んでいる。家族とは、血の繋がりとは、そんな問い掛けをしているようだ。咲花の志保子に対する思いが「ありがとう」である。

    一方 脇筋は常連客の1人が、同じ常連客の娘と付き合い始めたことを言い出せないこと。何とか応援する人々、さらに怪しい占い師などが登場しドタバタ感が増していく。自信がなく気弱な男が、好きな人のために奮闘する姿、それを音楽等の雰囲気作りで応援する周りの人々の人情が滑稽に描かれる。常連客の1人がヤクザであり、その愛嬌ある顔の下に、別の顔ー凶暴性を秘めており 滑稽さの中に緊張感を出す、そんな演出も見事であった。

    コロナでキャストの変更が相次ぎ、その手配は勿論、観客への連絡等 丁寧な対応をしてもらった。一時は上演も危ぶまれたようだが、自分が観劇した回は ほぼ満席だった。ダブルキャストの強みを生かした対処に感謝する。タイトルにある「はははははのはは」のような笑い事どころではなく、薄氷を履むような心境だったと推察する。勿論「僕の母は母の母⇒祖母」ということは理解している。その意は祖母と孫の関係がどうなったのかを容易に想像させる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/11/19 21:38

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