実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/11/08 (火) 18:30
座席1階
赤穂浪士の討ち入りを、討たれる吉良上野介側から描く、井上ひさしの名作。桟敷童子の劇作家東憲司の演出が光った。休憩を挟んで2時間半だが、目を離すいとまもなく終幕までなだれ込んだ。吉良役の大谷亮介らの熱演にも導かれた。
赤穂浪士は大石内蔵助も含め、声や物音だけで登場しない。吉良らが側近と隠れた炭焼き小屋を舞台に物語は展開する。
「吉良のひどいいじめと言うべき仕打ちが発端となって江戸城内で吉良を切りつけるという刃傷沙汰を起こし、その責任を取って浅野内匠頭が切腹を命じられた。一方の吉良側には何のおとがめもなく、赤穂浪士がその仇討ちとして吉良を討ち取った」
この一般的に描かれる物語を吉良の視点で見つめ返していく。とても新鮮な展開だ。
タイトルにもなっているお犬様が結構、いいところでほえたりかみついたり、主役のような動きをするのがおもしろい。綱吉が出した生類憐みの令で庶民が翻弄されたという背景をうまく引っ張ってきている。これぞ井上ひさしの戯曲のおもしろいところか。
桟敷童子で主役級を務める大手忍が女中役で登場するが、彼女のよく通る高い声が今回の舞台でもとても印象的。脇役がそれぞれきっちり仕事をして舞台を盛り上げている。
一見の価値がある「忠臣蔵」である。