レオポルトシュタット 公演情報 新国立劇場「レオポルトシュタット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ウイーンの成功したユダヤ人である工場主ヘルマン(祖父、浜中文一)を軸に、曾祖母エミリア(那須佐代子)から孫の代(レオ=八頭司悠友、ナータン=田中亨)まで4代の物語。1899年から1955年まで5つの時を描く。家族が多くて(25,6人?)、舞台上だけでは全部を理解できない。最初の一家のパーティーのあたりはあまりなじめないが、ヘルマンの妻でカトリックのグレートル(音月桂)の将校フリッツ(木村了)との不倫、ヘルマンとフリッツの対決・対話の場面は迫力ある(後の重要な伏線になる)

    第3場1924年、赤ん坊に割礼をするか否かの騒ぎは面白い。笑いが多い。子どもたちが大人になり、家族の成長を一緒に見守って来たかのような気になる。第4場1938年は、ナチスの迫害により一家離散はつらい場面。医師のエルンストは、ヘルマンに促され、移住に耐えられない認知症の妻を安楽死させる。第5場1955年、孫二人と叔母の三人だけ。迫害を生き延びたナータンと、何も覚えのないイギリス育ちのレオとの対話には、ズレと嫌味もあるが、次第にレオが過去との手掛かりを回復していく。収容所で死んだ一族の名が次々詠みあげられ、粛然とした思いがする。

    ネタバレBOX

    妻の不倫に目をつぶり、家族と妻のために屈辱に耐えたヘルマン。ナチスの迫害が起きた時、実子ヤーコブ(鈴木勝大)をフリッツの不倫の子だと、フリッツに偽の証言をさせ、自分の財産と息子を守った。何んとも見事な作戦だ。そうい例は当時あったのだろう。戦後の第5場で、へルマンは収容所に移送される前に、ゲットーで飛び降り自殺したと明かされる。しかもヤーコブは戦争が終わってから自殺したと。「自分には生きる価値がない」という理由で。切なく、粛然とさせられる。

    幼くして養父とイギリスにわたり、ウィーンの記憶のないレオがストッパードの分身。ストッパードの実父は医師だった。同僚医師の娘がガラスの破片で手を切った時、実父が傷を縫って治療した。50年後、ストッパードは彼女に会った時、まだ縫った痕が残っていた。その縫い後に触れて実父を感じたという。そのエピソードは変形されて戯曲に生かされている。ほかにも妻の肖像画のこととか、史実を生かした話がちりばめられている。作者の思いを考えさせられる。

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    2022/11/05 12:44

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