高島嘉右衛門列伝4 公演情報 THE REDFACE「高島嘉右衛門列伝4」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    令和4年度(第77回)文化庁芸術祭参加公演、観(聴き)応え十分で堪能した。SOLDOUTの人気公演というのも肯ける。

    前回公演の乾惕編も観ているが、今回の総集編・上では、幕末という激動の時代の中で、稀有な商才や易占を発揮した高島嘉右衛門という人物の半生が鮮やかに描かれる。物語は、長州藩・松下村塾の吉田松陰と その門下生との親交、そして明治新政府の近代化の一翼を担う活躍をした易聖の嘉右衛門のトピックを交錯させて展開する。時代という中に、人物伝が生き生きと綴られる。
    勿論、役者陣の朗読は素晴らしいが、音響や照明といった舞台技術もその効果を発揮し映える舞台にしている。
    (上演時間2時間 途中休憩10分含む)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に少し高くした平台、その上に大きな枯れ枝と中央部分のみ赤い花オブジェが置かれ圧倒的な存在感を放っている。その両脇に椅子、そして上手 下手にも椅子がある。役者は舞台を行き来したり、花がある所の椅子に座り、場所という空間の違いや情景・状況といった光景を観せる。また舞台幕の開閉で、上手 下手の椅子に座り状況の説明や心情吐露で、物語と一線を画す観せ方もする。シンプルな舞台セットだが、もともと朗読劇であり 多くの身体表現をしないから理に適っている。そして想像力を喚起させるには抽象的な造作の方がよいのかも。

    前半は、尊王攘夷を声高に叫んだ吉田松陰とその門下生を中心とした幕末動乱、その中で嘉右衛門が果たした役割が紹介される。列伝となっているが、あくまで志士たちと知り合いであり、表舞台での活躍とは言えない。幕末では事業の成功、失敗の繰り返しという破天荒さが描かれている。休憩後の後半、明治維新後の新政府との関わりに高島の人間性が表れてくる。商才に長けていたこと、巨万の富を得るが、欲得だけではない懐の深さを描く。それが東京・新橋と横浜を結ぶ鉄道敷設に関わり、海面埋め立て工事を請け負ったこと。また旧南部藩の借金減免を新政府に嘆願助力したことを熱く語る。

    さて、同じ「高島嘉右衛門」でも前回の乾惕編に比べると、今回は「時代の流れ」の中で人物を描いている。人間としての魅力は、その時代(背景)の中で、どう生きたかといった生き様、そこに魅力を見出すのではないか。その意味で、潜龍編・見龍編(2編は未見)・乾惕編ーー何回かに分けて高島個人のトピックや、同時代の人物との交流を時代に沿って順々に描いてきたようだが、「(明治)時代の黎明というか息吹」が細切れになり、時代のうねりというダイナミックさが十分伝わらなかったのではないか。前回公演の「観てきた」で、「『高島嘉右衛門列伝(全編)又は(前編/後編)』を上手く纏めることが出来れば、更に時代の流れの中に高島の偉業が(次々)表れ魅力ある人物像が立ち上がると思う」とコメントした。激動の時代を駆け抜けた嘉右衛門の生き様が、生き生きと描かれており、その魅力ある人物像が目の前に立ち上がってくるようだ。

    勿論、役者の演技は1人ひとり登場人物の特徴(容姿も含め)らしきものを捉え、物語の中で生き活きと描き出している。衣装…男優陣は黒っぽい上下服に同色シャツ、女優陣は着物姿といった外見上はほぼ同じで、あくまで朗読・演技の中で個々の力を発揮している。1人複数役を担っているが、例えば嘉右衛門の妻・庫(鈴木杏樹サン)は亡くなると、舞台を下り客席通路を通り姿を消す。「亡くなる=舞台を下りる」を重ねるが、そこには観客へのサービス(通路を通るから 間近に観られる)のようなものを感じた。そして別の役として舞台に上がる。朗読劇であるが、男優は汗が流れるほどの熱演、女優は妖艶さを漂わせた、見事なバランスで観(魅)せていた。
    次回(総集編・下?)公演も楽しみにしております。

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    2022/10/21 07:38

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