エンジェル・イヤーズ・ストーリー 公演情報 演劇集団キャラメルボックス「エンジェル・イヤーズ・ストーリー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    とにかくわかりやすく、楽しめる舞台
    舞台でしかできない演出の巧みさに引き込まれ、2時間まったく飽きない。
    温かくファンが見守っているということもあろうが、舞台と客席との一体感もある。
    そして、観劇後には、いつもの爽やかな印象が残る。

    ネタバレBOX

    フライヤーの写真と文章から、甘〜いクリスマスの物語かと思っていたらそうではなかった。

    家庭を大切にしていると思っていた主人公が、頭を打つことにより、他人の心の声が聞こえるようになってしまう(それをエンジェル・イヤー:天使の耳と言うらしい)。
    それによって、自分が実は家庭をあまり顧みていなかったことに気づき、家族の絆を取り戻すという、王道で予定調和で大団円で、だから安心して観られるストーリー。

    あくまで親子が中心の物語なのだが、後半、やや様子が変わってくる。それは、娘が勤める学習塾で犯罪が行われていると父親が推理するのだ。しかし、その根拠があまりにも希薄すぎて、まるで冗談のようだ。

    したがって、てっきり娘を想うあまりの、単なる思い過ごしで、ラストに真相が明らかになり、笑いに結びつくのかと思っていたらそうではなかった。実際に犯罪は行われていたのだ。
    クリスマスにふさわしい物語が見られると思っていたので、ここは犯罪が行われていなかったという甘〜い展開にしてほしかったというのが本心だ。
    物語的にもクリスマスはそれほど関係ないのだけれど。

    甘いのは、ミュージシャンを目指す息子が、ミュージシャン一本に絞ってやっていく! と決意するのかと思えば、「大学院に行かせてください」と頭を下げてしまうことだ。ミュージシャンになるのが本気だと言っているのに、滑り止め的なモノは一応押さえておきたいというところなのか。甘いなあ(笑)。

    とはいえ、物語は父親が事の顛末を自分の会社の社員に語って聞かせるという形式で、舞台の上では時間と場所が早いテンポで移動するのという複雑なものなのだが、実に手際良く、かつわかりやすく見せる演出は素晴らしいの一言に尽きる。

    これは、舞台でしかできない演出であり、うまいなぁと唸ってしまう。
    もちろん役者たちもフル回転で疾走し、その演出に見事に応えていた。それによって、2時間まったくダレることない。

    また、心の声が聞こえる。というのがポイントなのだが、それもうまく見せてくれる。
    さらに、お約束的な笑いも随所に盛り込まれており、とにかくサービス精神が旺盛でそれも素晴らしいと思う(とは言え、お約束の笑いの中で、太っているとか、背が低いとかという見た目に関する笑いは好きになれないのだが)。

    ストーリー的には家族を顧みていない父親なのだが、家族の誰もが父親に対してある種の偏見、つまり、自分のことを言えば父親に必ず反対されると思い込んでいる。父親だけがつまはじきにされ、信頼されていないという悲しい設定。
    しかし、息子に対しても娘に対しても、父権を取り戻したようなラストは、この物語の中での一番のメルヘンだった。

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    2009/12/23 08:14

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