実演鑑賞
満足度★★★★
冒頭からアルセスト(采澤靖起)が、フィラント(齋藤尊史)のお調子者の愛想のよさをなじる長セリフのシャワー全開。さすがモリエール。シェイクスピア同様、言葉の芸術としての演劇をたっぷり楽しめた。セリメーヌ(那須凛)の登場場面、彼女の社交界のお歴々の空っぽさをユーモアと辛辣さで次々描写するセリフは圧巻だった。
太った年増貴婦人のアルシノエ(頼経明子、派手な帯の黒い和服姿で好演)が、社交界の噂と称してセリメーヌの浮わついた男出入りをやんわり攻めれば、セリメーヌも負けじとアルシノヘの不人気ぶりをあからさまに言う。大変面白い芝居だった。
北則昭の新訳はこなれた日本語で、調子がいい。白い階段を黒子が移動させ、中央の三角の傾斜台をクルクル回して、長台詞に飽きやすいところを、視覚的に変化をつけていた。
ヒロインのセリメーヌが「マダム」とか「++夫人」と呼ばれたり、誰と結婚するかと言われたり、未婚か既婚かと疑問に思ったら、あらすじを見ると未亡人ということで納得。20歳だから相当若い未亡人になる。