GOLD IN THE DUST 公演情報 GROUP THEATRE「GOLD IN THE DUST」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    未来を切り開き光を見つける迄の彷徨、その心の旅を描いた物語。その光とは何か、それがこの公演の肝になっている。表し難い心、その内にある感情をコントロールする研究ー「感情を抑制する脳内因子『ダスト』の特定と不活性化についての研究」という理論上の世界をどう表現するのか。研究理論が説明され 少し小難しく感じられるが、観ているうちに表層的な面白さに翻弄される。しかし研究成果(核心)の発表として語られるのは、「生きる」という希望の感情である。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、3つのシーンで場景が異なる。一番目は、説明にある木村(真人)の葬儀場面。鯨幕の手前、上手下手に3脚づづ椅子が置かれ、中央の黒い台の上に白棺。二番目が都内にある工科大学脳科学研究室内、テーブルや机等が置かれている。下手には地下実験室への下り階段がある。三番目は地下実験室で中央に椅子、上手に実験装置(PC)がある。下手に研究室への上り階段がある。場景の連続に拘りの工夫が見て取れる。それぞれの場面転換には時間を要するため、暗転時に舞台上部に白木の枯れ枝や四角い板状の影を回転させる照明、その妖しげな雰囲気に飲み込まれる。表現し難い照明効果にも心内の曖昧さを重ねる。

    物語は、工科大脳科学研究室「通称:BSラボ」に勤務する斉藤智治(北見翔サン)は、一年前に交通事故で亡くなった同僚の木村真人(林佑太郎サン)と続けてきた研究を、志半ばで 鬱病が進行していることを理由に退職すると言う。室長の杉田良一(梶原涼晴サン)は、せめてこの研究をやり遂げるよう説得する。そして杉田は斉藤が退職する前に急遽 実証実験をすると宣言する。が 検体として使用予定であったラットがいなくなったことから、代わりに斉藤の人体実験ーー心の旅が始まる。

    少し分からないのが、そもそも斎藤が鬱になった原因なり理由である。困難なこと、煩わしいことから逃避しようとする性格のようだが…。
    物語では、同僚の死によって鬱が進行したよう。それが「詳らかになる感情の足跡と喪失の記憶」という研究の核心に触れるところ。そしてBSラボでの木村との親交、その死による喪失感といった描き方である。人体実験で記憶の感情(信頼・恐れ・驚き・悲しみ・嫌悪・怒り・期待)が色によって可視化できるに繋がる。この感情の読み取りによって鬱病の対処に役立つ。自分の情況と研究成果を重ね合わせる巧さ。

    観せ方は、実験過程で死んだ木村と 度々現れる もう一人の自分(シャドウ人格〈衣装の色彩にも注目〉)と思われる安西鏡像(山本龍兵サン)が、心という感情を擬人化して台詞の応酬をする。それは自身の葛藤する姿そのものである。その先にある光輝くもの、それは人の想像力である。言い換えれば、人間の想像力は光を生み、豊かな感情を育み未来を輝かせる。「生」への力強いメッセージである。終盤に流れるピアノ演奏は、心洗われるような印象 見事な音響効果である。ラストは、刺激的でドラマチックな展開が用意されている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/13 18:12

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