シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー「聖なる怪物たち」 公演情報 公益財団法人日本舞台芸術振興会「シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー「聖なる怪物たち」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    意外とエンタメ
    タイプの違うダンサー二人の組合せ。アクラム・カーンは民族舞踊から出発している人みたいだし、かたやシルヴィ・ギエムはバレエのダンサー。
    変に芸術志向というか、テーマを掲げたような作品だったらイヤだなと思っていたが、ソロとデュオからなる6本ほどのダンスの間に、軽いユーモアを交えたトークが入るという構成で、たとえば大物歌手の共演する「ふたりのビッグショー」みたいな親しみやすさがあった。
    ダンサーは二人とも身体能力が非常に高く、筋力、瞬発力を感じさせるシャープな動きが目立った。いちばん最後のデュオではユニゾンで動くところがあり、そこでは特にストリートダンスに近い感じがした。
    身長はギエムのほうが少し上回る。腕の長さ、細さにもだいぶ差がある。バレエを踊るならギエムのほうが圧倒的に優位だろうが、しかし小刻みにしかも素早く手足を動かすとなると身長や腕の長さが逆にハンデになる。アクラム・カーンが踊りのベースにしている「カタカリ」というインドの舞踊には、たしか武術的な要素が入っていると聞いた。
    ダンスの出自だけでなく、体つき自体も大きく異なる二人だが、とはいっても決して異種格闘技の雰囲気ではない。互いの違いや特徴を残しつつ、ちゃんと一つのダンス作品の中で踊っている。競演ではなく共演している、とでもいうか。

    生演奏をする演奏家と歌手が舞台の両端に陣取っていた。どこの国の音楽かは知らないが、民族音楽っぽい。基本的にはその演奏に乗って踊っていて、ドラマ性は感じなかった。舞台装置は白いゴツゴツした感じの壁が石灰岩の岩肌を連想させた。チラシに載っている過去の作品評では「氷山のような」と形容されていたが、私はそれほど寒々とした印象は受けず、むしろ白く乾燥した土地に思えた。

    シルヴィ・ギエムというダンサーを知ったのは最近のことで(そもそもバレエを見始めてからまだ日が浅い)、そのときには彼女はすでにクラシックバレエをほとんど踊らなくなり、コンテンポラリー作品のほうへ重点を移していた。
    なんとなくその理由を体力的なものだろうと思っていたのだが、この日の彼女の動きを見ていると、それは決して体力的なものではなく、むしろクラシックバレエの動きだけでは彼女が飽き足りなくなってきた、体が満足しなくなってきた、からではないか、と思ったりした。

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    2009/12/20 12:00

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