朗読劇 無宿の寵愛 公演情報 株式会社K'sLink「朗読劇 無宿の寵愛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、朗読劇だが 力作といった印象である。
    また楽しみに出来る劇団と出会えて嬉しく思う。

    幕末の動乱期、人斬り以蔵と恐れられた「岡田以蔵」の半生を力強く語る。それは単に台本を読むだけではなく、音楽・音響、照明といった舞台技術との相乗効果も見事に発揮。なにより役者陣の熱演が物語に緩急をつけ、巧みに その世界観に引き込む。朗読劇ゆえ、殺陣等の動きこそ観られないが、表情の豊かさ、土佐弁での喋り、そして全員和装(紅一点の万姫サンは日本髪)で、外見にも気を配る。勿論、舞台美術も意味ある配置で、武家社会を端的に表している。

    以蔵は、足軽という身分(1人だけ裸足)ゆえ、学がなく泥臭く地べたを這いずり回るかのような描き方であるが、不思議とその世界観は格調高い。彼の心情を激白させるが、そこには疑うことを知らない純心さ。それ故の悲哀が浮かび上がる。
    (上演時間1時間30分) 

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央奥を少し高くした平台(山内容堂)、その下手側に中央より少し低い平台(武市半平太)がある。中央と上手に障子戸が立ち 和空間を表出する。下手に洋楽器があり、場面に応じて生演奏を行う。登場人物は概ね8人(箱馬の数)。一人で複数役を担う役者がおり、それによって幕末という動乱期に生きた人々(志士達)を活写する。役者陣の熱演が、この朗読劇の醍醐味そのものである。特に以蔵役の積田裕和さんの目力は、鬼気迫るものがある。

    登場人物は、岡田以蔵、山内容堂、武市半平太、坂本龍馬、平井周二郎、井上佐一郎、土方歳三、そして紅一点で語りと岡田以蔵が惚れた なつ である。なつの語りで状況が丁寧に説明されるから、人物の朗読が始まっても困らない。朗読する時に立ち上がり、そこにスポットライト。全体的に薄暗い中で 特定人物への照射は、その角度によって他の人影と重なり暗殺といった光景を観せる。

    物語は土佐藩士・吉田東洋が武市半平太の指示によって暗殺されるところから始まる。半平太は思惑もあって、足軽という身分低き岡田以蔵に目をかける(寵愛)。その恩義に報いようと、京都で人斬り以蔵と恐れられる存在になっていく。最初の暗殺は同じ土佐藩士の井上佐一郎(土佐からの下横目)、その絞殺場面が下手の壁に大きな人影となって覆い被さる。見事な照明効果の演出である。また音響は生演奏と音楽を流す方法で情景を印象付ける。場面によって洋楽器の演奏、和楽の音楽を流すといった使い分けが実に効果的であった。台詞(心情表現)によってはエコー効果も効かせる。

    学(がく)がなく、ただ半平太に言われたことを実行する。坂本龍馬から時代の趨勢を聞かされるが、それでも半平太の言葉を盲目的に信じる。そこに悲しいまでの妄信を見る。京都の小料理屋の女・なつ は、以蔵にとって安らぎの存在となっている。淡い恋心のような、そんな”愛”も感じられるが…。
    素性の知れない武士と親しく話すようになるが、それが新選組副長・土方歳三である。その会話は、敵同士でありながら暗殺談義をするような光景。以蔵は歳三に対し、同じ血の臭いを嗅ぎ取っていたのかも知れない。一方、半平太は山内容堂の逆鱗に触れ切腹する。その後、以蔵も斬首されるまでを描く。無駄死にとも取れる様な「岡田以蔵」の半生、それでも一人の幕末異端志士として力強く描いている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/10 17:35

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