源氏ものがたり 公演情報 アイサツ「源氏ものがたり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    感心した点も多かった
    「源氏物語」をどうやるんだろうと想像も
    つかなかったのですが「宇治十帖」を持って
    きたんですね。「源氏」でもここは独立した
    いわば番外編なので、小品の題材としては
    ふさわしいかもしれません。
    また、原作の源氏ファンとしてはちょっとした
    プレゼントです。「宇治十帖」の舞台化は。
    観る前に「古典のくだらないところ」という表現が
    引っかかってたんですね。つまり、「所詮この程度の
    話じゃん」という姿勢で劇化されると悲しいなぁと
    思って。ネット検索すると、「宇治十帖」について
    若い人だと思うが、若者言葉でかなり適当な解説を
    つけて茶化している文章もあった。この芝居もそれに近い
    部分もあったが、演劇だけに感心する場面もあったのは救い。
    「三顧の礼シリーズ」の他の作品を観ていないので、
    企画の全体像をとらえて書けないのは残念です。
    古典へのアプローチについてはこの作品に限って
    の感想を書かせていただくことをご了承ください。

    ネタバレBOX

    作者自身の尾倉ケント氏が語り部となって登場。tetorapackさん
    が書いておられるように、この程度の説明は高校の古文の授業
    でもやってるんじゃないかというご指摘は同感です。
    ただ、興味のある人は覚えてるけど、古文の授業で習ったこと
    なんて全然覚えてないと言う人にけっこう会うので、まー親切
    かなと。最近の若い世代の古文の授業内容を知らないもので、
    そのへんはよくわかりませんが。
    自分は高校のころ、「伊勢物語」のパロディを古文で書いて、
    先生に褒められたのが評判となり、生徒たちが手分けして
    書き写し、学年中回し読みしてもらえたくらい、古典は得意
    で好きなんですけどね。
    一緒に観た連れは、やはり簡単な人物相関図をパンフレットに
    載せるか、ボードで見せるかしてほしかったと言ってました。
    これは「宇治十帖」の場合、結構重要なんです。
    なぜかというと、薫と匂宮の性格の違いというのは生い立ちに
    関係してくるので、瀬戸内寂聴さんなどはかなりわかりやすく
    面白い解説をしてますが。ナレーションだけでも生い立ちの説明は
    したほうがよかった。で、ないと、古典の知識なしに観ると、
    現代の服装で演じるだけにホストとチンピラの違いにしか見えない。
    匂宮は原作でも色好みの「あだ人」として描かれてるが、彼の母方の
    祖父が光源氏なので、「光源氏の再来」と言われるほどのプレイ
    ボーイ。どこが違うかと言うと、祖父の源氏は生母の問題や義母との
    不義など陰のある人生を背負ってるけど、匂宮は天真爛漫な皇子なんです。
    この芝居ではチャラ男。一方の薫は、光源氏の子として育てられてま
    すが、実は女三の宮と柏木との不義の子で、光も勘付いていた。
    紫式部は薫に不義の子という蔭を背負わせ、誠実な「まめ人」として
    描いた。で、2人は友人ではなく近い親戚なのでライバル心もそれ相応ある。
    こういうところを解説してほしかった。
    現代の服装とはいえ、衣裳は悪くはなかった。黒のスーツに匂宮の赤、
    薫の青のシャツが性格を対比してたし。
    匂宮の側近、時方のチーマーぶりには参った(笑)。信頼厚い忠臣
    なんだけど。チンピラのパシリみたいで。でも、愛嬌があった。
    身の上を嘆く大君と中の君の会話もしみじみとした心情を表して
    わかりやすかった。原作の場面が現代に蘇った感じで。
    夜這いの場面も、女優2人(石井舞・渡辺いつか)の
    演技が品を失わず、とてもよかった。ここをおちゃらけでやられると
    台無しですから。
    2つ目の注文は、この時代の女性は父親の後ろ盾が社会的地位に大きな
    意味を持ったという説明を入れてほしかった。父のいない姫君のハンディ
    は半端ではないのだ。それがわからないとただ意志薄弱な姫君に見えてしまう。
    僧侶たちの読経の声が狂言と同じ手法なのは感心した。
    注文の3点目。浮舟が途中から女優でなく、尾倉氏に代わってしまう。
    「何で!!」この違和感は大きかった。浮舟の哀れさが消えてしまう。
    大君と二役を演じた石井舞さんがとても良かっただけに惜しかった。
    だが、これは連れに指摘され気づいたのだが、チラシより1人出演者
    が減っていた。ということは、配役の変更はやむえなかったのかも。
    演出上、最初からの意図で代えたとは思えないので。
    だとすれば、小君(これも石井舞さん)を他の俳優に代えて対処できなかったものか。
    そのほうがまだ違和感が少なかったと思う。
    この配役変更がなかったら意欲を買って☆4つを出しました。
    舞台美術の紐を他のかたは「黒、白、赤」3色と書いておられるが、私には暗幕の黒色と比較すると黒ではなく、濃紺に見えたのですが違いますか?これと同配色(紺=花色、白、赤)の舞台美術を源氏物語の劇で観たことがあるのですが。そのほうが古代色の組み合わせとしては適っているものですから。

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    2009/12/15 13:55

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  • きゃるさん

    なるほど、とても参考になりました。さすが、お詳しい。
    こういった古典を題材にした芝居は、とてもリスクが大きいものです。そこに打って出た意欲は私も買いますね。
    西洋でいうなら、シェークスピアとかイプセンとかを思いきった再構成とオリジナリティーで作り替えるようなものでしょうか? 私は、そういったものも、できるだけ観るようにしています。もちろん、その手法は様々ですが。

    2009/12/15 14:13

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