満足度★★★
リングの中に世界
チケットもままならないまま札幌から飛び出してきたが、滞在最終日にしてようやくチケットが取れた。ホントに嬉しい。
世界のメタファーとしてのリング。
リングの上に、人間の愚かさの歴史が集約されている。
今までのような言葉遊びは姿を消し、強い憤りや怒りといったものがリングの周りで展開される。
そんな印象を受けた。
リングに立つ者、試合を企画する者、それを観る者、実況する者、プロレスをめぐるさまざまな人たちの思惑が“戦い=暴力”の物語へと発展していく。
一見して今まで比べ圧倒的に地味な芝居なのだが、そこから次第に浮かび上がる思念の激しさは今までとは比べものにならないほど。
次々とタブーに踏み込み、自分たちもその中に含まれることを自覚しつつ糾弾する。この芝居を行うことはまさにそんな行為に他ならない。
こういったメッセージ性を盛り込むことについては賛否両論あるだろうし、私も懐疑的な立場ではあるのだが、これだけのものを見せられると「アリかな〜」なんて思ったりする。まぁ、演劇だってメディアの1つなわけだし、そこでジャーナリズムを語るのも、自己矛盾に対して無自覚な報道番組を観るよりかは有効だと思える。
最後のシーン、今までの野田芝居では観たことのないほど静かに、そして淡々とした様にあっけにとられてしまった。
すごく優しさに溢れたシーンだと思う。