実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/10/06 (木) 19:00
同じつかこうへいの作品といっても原田芳雄と藤谷美和子出演映画とはかなり雰囲気が違う。結婚はしていないが、妻が劇団員の男をとっかえひっかえ関係を持って逃げ、また戻ってくるという「寝盗られ」を繰り返される主人公を演じたのは小川智之。太っ腹を装いながらも、どこかちょっとドキドキしているような雰囲気を見せていた。これは9プロジェクト独自の演出と言ってよいのかもしれない。
東京公演の初日に拝見。その直前に俳優一人が体調不良で交代するというアクシデントに見舞われたそうだが、見ている限りはまったく違和感なく進んだし、楽しむことができた。このあたりは役者たちのチームプレイが奏功したと言えそうだ。
妻役を演じた高野愛は、今回も安定感があった。迫力もあったし、力を抜くところは抜いていて、客席の笑いをしっかりとった。旅の一座のメンバーも個性豊かで、それぞれバラバラに見えて最後は座長を中心にまとまって舞台を勤め上げるという物語の流れをしっかりと表現していた。
アクションシーンも見応えがあった。そして何よりも、小劇場の舞台には照明と音響装置以外の何もないというのはある意味スゴイ。役者たちは自らの体当たりの演技を直接客席にぶつけざるを得ないステージだからだ。照明と音響の効果はあったにせよ、その力を遺憾なく発揮したのは見事だった。