虹の彼方で待ってるよ 公演情報 KUROGOKU「虹の彼方で待ってるよ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    上演前に主宰・黒柳安弘氏が、町野直子さんが諸事情により出演を見合わせる旨、お詫びと説明があった。彼女の役柄が分からないが、公演もラストが今一つ解らなかった。

    物語は、一見 安部公房氏の小説「闖入者」それを基にした戯曲「友達」を連想したが、次第に明らかになる出来事によって今話題になっていることへ…。家に見知らぬ人々が押しかけ、いつの間にか部屋を占拠していく。家人とその人々の ちぐはぐな会話を通して不気味な空気が漂い始めるが…。表層的にはコメディ風に描かれているが、その背景には寛容と不寛容、もしくは自由と不自由といった問題が横たわっているようだ。
    (上演時間1時間30分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は6畳間、奥に障子 中央に卓袱台があり、その上にルービックキューブと雑誌、下手側に洗濯物が置かれている。

    「ただいまー」と海津梢が帰ってくる。畳んでいない洗濯物を見て呆れる。暫く家にいないと これだからと嘆く。そこへ見知らぬ男・小島一朗がやってくる。父・啓吾の勤務先の後輩だという。間もなく啓吾も現れ取り留めのない会話が続く。暗転後、部屋には宇田、佐伯、大山と名乗る男女三人、後から佐伯が加わる。皆、啓吾の知り合いだと言い出ていかない。梢の苛立ち、三人の困惑、それぞれの立場や性格が立ち上がってくる。父は人助けだと言い、強い言葉は発しないよう注意する。
    物語は、この闖入者のような人々の素性は、そして父・啓吾との関係は、そもそも父は仕事を辞めて何をしているのか、といった謎をはらんだまま進んでいく。
    そして突然、土足で家に上がり込む若い女性・仙崎、彼女は何しにここへ来たのか。6畳に8人が集まり、嚙み合わない会話、そこから徐々に浮き彫りになる闖入者と仙崎の正体と関係性が明らかになる。

    雰囲気は、恐怖に充ちたユーモア、微笑にあふれた残酷さ、そんな空気感を漂わせる。そして会話の端々に、神と祈り、お布施と安息な日々、しかし そんな言葉は空虚に聞こえる。不自然な自由は、逆に不自由極まりない。宗教的な教えが、個々人の孤独な思いを飲み込み、親切気を装い洗脳するかのような言動。これは現代のどこにでもありそうな寓話。布教という名の怪物は、いとも簡単に人の心を取り込む。自分の心を取り戻す、そんな手助けをしようとする父・啓吾は、別の意味で聖家族を形成しようとしているようだ。

    信者たちの癖のようなもの…困ると気を失う(寝たふり?)、自分の主張ができない、思いを言葉にできず、代わりにタンバリンを叩く、猿に腕を噛まれ体中が青い、など奇妙・奇抜な設定が面白可笑しい。深刻な内容だが、そこは感動系コメディに仕上げている。
    ラスト、照明を階調し 梢と啓吾の父娘二人で しりとりゲームをする。梢の楽しい記憶、仄々とした会話。そして梢が そろそろ「帰るね」と…。お彼岸(上演時期を考える)に帰ってきたのは、本人か、それとも魂だったのか、そこが判然としない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/02 00:09

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