少女架刑 公演情報 諏訪会「少女架刑」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    情に囚われず強く淡々と
    吉村昭氏の原作どおりの芝居にもかかわらず、
    降りてきた印象にはまったく別の色が宿って・・・。

    演者のしなやかな強さが印象に残りました。

    ネタバレBOX

    原作を読んだのはもうずいぶん昔のことなのですが、
    観劇前から内容はそれなりに記憶に残っていました。

    突然の病死、そして躯を献体という名目で親に売られる。
    さらには、遺骨の受け取りすら、母親に拒絶されて・・・。

    諏訪友紀はほぼ原作どおりに
    物語を演じていきます。
    そのお芝居には、
    粗い質感もあるのですが、
    その粗さこそが
    鋭角な感情を
    やわらかく擦り込むように観る側に伝えていく力になって、
    吉村昭が綴った言葉を、紙の上ではなく、
    舞台上にあるもののぬくもりとして
    膨らませていきます。

    シーンごとにその少女の思いが
    ひとひらずつ観る側の感覚に重なっていく。
    その重なりが、文字から伝わってくるものよりも
    ずっと細密でやわらかく淡くて深いのです。
    諏訪の演技が持つ奥行きが
    それらを崩したり散らせることなく
    観る側に積み上げていく。

    即興演奏も効果的。
    直感的な感覚の描写を音にゆだねることで、
    演者の台詞から不要なデフォルメが消されて・・・。
    少女に去来するそのままの感覚で、
    言葉が舞台から観る側に染みとおっていきます。

    肉体を切り取らるたびの喪失感、骨格標本との時間の比較・・・。
    その積みあがりが行き場のない時間の長さとなり
    観る側を押し込んでいく。
    物語が進むごとに
    透明な閉塞感が粒子のようにつもって
    行き詰まるような鈍さをもった痛みとなっていく。

    それらを全て燃やし尽くすような荼毘の刹那には
    ある種の高揚感に満たされてとても美しかったです。
    舞台美術や照明も秀逸でしたが
    その身が燃え尽きることによって
    解き放たれる感覚が圧倒的で・・・・。

    そして、その先、死の世界にまで冷えていく感覚にも
    ぞくっとしました。
    静寂であるはずの死に訪れた喧騒も
    透き通ったまがまがしさをもって
    観る側の心を凍らせたことでした。

    このお芝居。、さらに育っていく余白も感じられて・・。
    ここが頂点ということではなく
    もっと磨き上げられていくお芝居なのだとは
    思います。
    間の取り方や想いの出し入れの変化でいろんなニュアンスが
    さらに強い光を放ちそうな気もするし・・・。

    純白の仮面(少女の独白と第三者の会話を切り分けるために使用)はないほうが(落語のように上下を切る仕草だけのほうが)より強いインパクトを観る側に与えるのではとも思ったり・・。

    充分に浸潤されつつ、さらなる可能性を感じた舞台でありました。











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    2009/12/07 11:21

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