NO GOAL -HOMELESS WORLDCUP- 公演情報 青春事情「NO GOAL -HOMELESS WORLDCUP-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    表層的にはスポ根もの のようだが、そこは「ホームレスワールドカップ」という あまり知られていない?競技で興味を惹く。自分は知らなかった。この競技、ホームレス状態の人が一生に一度だけ選手として参加できる、社会復帰を目的としたストリートサッカーの世界大会だという。話は、その世界大会を目指すメンバー、スタッフが数々の困難を乗り越えて、という典型的な青春、いや中年の人生再起を賭けた熱きドラマ。

    ホームレスの人たちの事情は、敢えて一人ひとり描くことはせず、物語の流れの中でいくつか描くに止める。劇中では、ホームレスになった原因や理由は人それぞれで、中には自然災害で家屋を失った人もいると。今、コロナ禍で暮らしも不安定になっており、先行き不透明な時期であろう。

    「ロッカールームを舞台に、実在するホームレスワールドカップ日本代表『野武士ジャパン』をモチーフに描いた過去作を、満を持してここに再演!」という謳い文句…今、再演する意味ーーこれは人生の応援歌なのだ!そしてラストに無言のメッセージが…。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、形の違う いくつかの箱馬のようなもの。正面は(紗)幕、上手・下手には非対称の色衝立、両壁には網が張られ、その内側に複数の空き缶と同数のライトがある。網はゴールのイメージ、空き缶はホームレス、ライトはスタジアム(試合)を連想した。キッチリと作り込まないのは、「ホームレスワールドカップ」へ向けて、時間と場所が流動的だから、イメージの舞台セットにしている。

    ストーリーテーラーとして まや(大山麗希サン)がボランティア、そして卒業論文テーマとの関わりで要所々々の状況をコンパクトに説明する。「ホームレスワールドカップ」は、ホームレス状態の人が人生で一度だけ参加できるストリートサッカーの世界大会とのこと。別府(加賀美秀明サン)は海外試合のため資金集め等に専念し、さらに勝利するためプロ選手を招聘することにした。そして新人監督・毛利(中村貴子サン)の下、「さすらいジャパン」の戦いはスタートを切ったが…。サッカー経験者は一人だけで戦術(用語)さえ まともに覚えられない。機嫌を損ねて練習に来なくなったら、携帯電話もなく、家さえないからそのまま音信不通だ。練習を重ねても一向にチームとしてのまとまりを見せない選手たち。監督の提案で二泊三日の合宿を行うことになり…。ここまでが、登場人物の性格やチーム内の立場・役割を説明。そしてチーム状態を見せることで、今後どう変化し纏まっていくかという過程を印象的に導く巧さ。

    一方、選手たちばかりではなく、スタッフは海外試合の資金繰りやパスポートの取得や問題も明らかになる。ホームレスになった原因の一つに、姉のために義兄(会社の上司でもある?)を殴り 解雇された男。姉から失踪宣告が出され、11年が経ち戸籍謄本が取得出来ない。また別の男はギャンブル好きで、パスポート申請費用を競馬で失うという始末。ここで、日本のNPO法人ビックイシュー基金の存在を示す雑誌販売の場面を描く。自分たちの手で販売し、利益を得るところに自立の姿を見る。安易に手助けはしない。厳しくも温かいエピソードを挿入する。

    貧困という世界共通の問題や、人間の可能性を考える。そぅ 世界中にいるホームレス、国力とでも言うのか、日本に比べ貧困に喘いでいる国々の選手層は厚い。そんな国々を相手に戦って勝ち目はあるのか。社会復帰を目指した彼らにとっての“絶対に負けられない戦い”がそこにはある。色々な意味で ラストの「試合に負けただけで、人生に負けたわけではない」という字幕は熱き無言のメッセージとなっている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/10/01 06:52

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