「五月、忘れ去られた庭の片隅に花が咲く」 公演情報 北海道演劇財団「「五月、忘れ去られた庭の片隅に花が咲く」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    登場人物のやるせなさと恨み、悲しみが舞台を覆いつくすような、激しい感情を喚起する芝居だった。ここまで激しく濃密なドラマは久々に見た(思い出すところでは「ザ・ウェルキン」のラストに近い、か)。

    主人公で次兄(斎藤歩)と、弟の妻だが主人公と密通した彼女(智順)の、まさに愛憎入り混じった口喧嘩、いがみ合いは騒々しい。30年前のばめんと現在が行き来するが、現在では彼女の息子(犬飼淳治)がホモのパートナー(津村知与支)とくらしており、帰ってきた次兄を忌み嫌う。津村のおねえ言葉や、舞台をかき回す無邪気なトリックスターぶりが最高に面白い。単に言葉だけでなく、くんずほぐれつ、投げ飛ばしたり、ごろごろ転がったりの、体を張った演技も見ごたえあった。

    死んだ弟がホモだったことも示唆されている。鄭義信が同性愛を扱ったのは珍しい。「泣くロミオと怒るジュリエット」では、ロミオの親友が同性愛者だったが。今回は「(男同士の情事を)想像したでしょ、想像したでしょ」などと、きわどいセリフもある。ホモをユーモアにくるんで大いに笑いをとっていた。

    ネタバレBOX

    弟の死んだ炭鉱事故が、81年のあの大事故かと思っていたら、クライマックスでもっと大きい事故が起きる。これが81年の自己をモデルにしたものだ。長兄が坑道に取り残され、主人公は「注水同意書」の署名を迫られる。「弟に続いて、兄までも俺は見殺しにすることになる」「周りがなんと見るか?」「これに署名したら、俺はここにはいられない」と。彼女はそれでも署名をすすめるのだが、この場面、彼女の目には本当に涙が光っていた。目薬も差していないのに、本当に感情が高ぶる舞台ではこういうことがある。(この前もそういうシーンを見た)。主人公は署名する代わりに、家を出て行った。隠し子の高校生?の必死に止めるのも振り切って。

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    2022/09/29 11:09

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