ヘンリー八世 公演情報 彩の国さいたま芸術劇場「ヘンリー八世」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、見応え、聴き応えのある芝居だった。なんといっても吉田鋼太郎演じる枢機卿の欲望、陰謀と王への追従ぶり、それをすべて失う失脚のおそれと、哀れと絶望の生々しさが素晴らしい。失脚の場面では阿部寛のヘンリー8世と互角に対していた。宮本裕子のキャサリン王妃の裁判を拒否する威厳と苛立ち、離婚されて死んでいく最後の悲しみも良かった。このように、場面場面がくっきり描きこまれて、その人物の喜怒哀楽が舞台上に現出するのは、さすがシェークスピアだ。吉田鋼太郎の演出もメリハリがはっきりしている。(2年前の初演は「わかりやすくしすぎた」と、キャサリン派と枢機卿派の色分けなど表に見せないものも今回は多かったが)

    阿部寛は、そこにいるだけで舞台を圧する存在なので、絶対君主ヘンリー8世として文句ない。ただ誠実なキャサリン王妃を見捨てて、アン・ブリンに乗り換えるのが、「我が良心の痛みのため」と切々と訴えるのが、本心なのか、演技なのか。王の威厳の裏の本心はなかなか見えづらかった。王とはそういうものかもしれない。(これも初演のときは、もっと苦悩する王として演じたらしい)

    音楽、美術、衣装も素晴らしい。この舞台でしか味わえない特別の空間を作ってくれた。3時間5分(休憩15分込み)。初日だったこともあり、客席も早くから、惜しみないスタンディング・オベーションだった

    ネタバレBOX

    開演に30分遅れたのは残念。ヘンリー8世が王妃を離婚する動機である男子=世継ぎが生まれない苦悩を示すセリフのないプロローグと、アンと王が初めて出会うダンス場面などは見逃してしまった。

    2幕の後半、金子大地演じる若いカンタベリー大司教をヘンリー8世が気に入って、重用する。なぜそんなに気に入ったのかわからず、取ってつけた感は拭えなかった。これは戯曲の弱点だろう。

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    2022/09/17 00:17

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