実演鑑賞
満足度★★★★
シアターグリーンにてブロードウェイ・バウンズ『赤羽焼肉劇場』を観劇。
赤羽に実在する焼肉屋、オーナーをモデルに、コロナウイルス拡大防止のための施策(時短営業、酒提供制限など)に葛藤する現代像を描いた作品。実に生々しく、リアルな設定に、これが令和の演劇かと、新たな時代の到来を実感したような感覚になりました。それくらいこのウイルスの世界的流行は衝撃的で、時代を動かした出来事と言えると思います。
今回の作品で面白かったのは、単にこのコロナ禍にある現代だけを映したのではなく、戦争していた時代の社会情勢、人物像などを融合させた点かと思います。コロナ禍で国から時短要請が出されているにも関わらず、営業を続けている飲食店、酒の提供自粛要請が出ているにも関わらず、平時と変わらずアルコールを提供している居酒屋。コロナ蔓延初期の頃、そのようなお店がニュースに取り上げられ、問題がクローズアップされていました。国の要請に従わない、つまりは“非国民”。過激な表現であり、個人的には決して用いるべき言葉ではないと思っていますが、確かにそのような誹謗中傷が問題化していたのも事実だと思います。
この現代社会の状況と、今からおよそ80年前。お国のために働き、それに従わない国民は“非国民”と呼ばれた戦争時代の状況を上手くシンクロさせた作品で「何ともまぁ斬新な発想なのでしょう」と、脚本のユニークさに感心してしまいました。
今回の物語に登場する焼肉屋は、当初は国の要請に従っていたものの、様々な事情から転換し、やがて誹謗中傷の的になったとのこと。その時に実際に届いた誹謗中傷の貼り紙が公演パンフレットに載っていましたが、飲食店が抱えるコロナ問題はやはり深刻だと改めて感じました(どの業界も厳しいとは思いますが)。
今回このブロードウェイ・バウンズさんは、大変失礼ながら、団体名も存じ上げていない程、完全に初見でした。ただ、代表取締役でもある山内勉(ツトム)さんをはじめ、キャストの皆さんの自然体の会話劇はクオリティが高く、実際に赤羽の焼肉店の様子を覗いてるかのように感じる部分もありました。現代の焼肉屋に戦車や軍人が入って来て「営業を止めろ」などと叫ぶ、時代がシンクロしたようなシーンも面白かったです。パンフレットに記載されていた“エンターテイメント社会派劇”に相応しい作風であったと感じます。