期待度♪♪♪♪♪
本作を観ようという人は珍しいのかも。
かく言う自分も演劇ファンとしてこの舞台を見たいのか、と言うと微妙である。
イザベル・ユペールが「来る」となれば見ぬわけには・・となるのは映画好きとしてである。
無論、まだ観た事のない「ガラスの動物園」をこの機に、という魂胆はある。だが日本語では当然やらないだろうから、一度読んで観劇に臨むつもり。
言語はフランス語か。とすると同カンパニー的にも翻訳劇の上演という事になるか(それとも英語でやっちゃうのかな...仏国は欧州の中でもアメリカナイズ度の最も低い国と思ってるが、20年前に刻まれた心象である)。
かの女優の初見はアンジェイ・ワイダ監督「悪霊」であった。貧しい村で先進的な思想をもってある種の野望を体現しようとする若者たち。当時はそうした動きが(ヨーロッパの辺境と言える)ロシアでは各所で澎湃と起こったようであるが、「血に飢えた者」が進歩や革新に「かこつけて」ナニするという、(私は連合赤軍事件と重ね、マルキシズムが潜在的に持つ性質だと思っているが..ちなみにその淵源はフランス革命)ドストエフスキーの原作を一定忠実に起こしたらしい映画だった。
ここで「犠牲」になろうとする実直だが野心もある男の妻(イザベル演じる)が、モスクワから夫の元へ戻って来る。光量の少ないロシアの地、すすけた顔が、寒々とした部屋で厚い外套を脱ぎ、凍った帽子をとって髪をほぐして漸く「人心地」つくと、僅かばかりの紅が射す。無表情(寒い土地の人らしい)の中に僅かな感情の動きが微かに現われる、それが素晴らしく、そのふと過ぎった表情に魅了された。元が美しい人ではあるが、美人である事が表現されてはおらず、夫に対して一瞬だけ見せる親しみの表情で、二人の関係が見える、こんな人が自分の相手だったら、と(本筋とは関係なく)つい夢想した程。
この女優は他にも「ピアニスト」などで際どい役をやって印象深い。
まあそんな訳で密かに、じっくりと観劇の日を待っている。